危機の認識が欠如している
食料調達と食料生産におけるこれほどの危機に直面しながら、どう対処するかという議論がほとんど聞こえてこないのは、いったいどういうことだろうか。
ホルムズ海峡の封鎖が、日本国民に飢餓の可能性を突きつけているという認識が欠如していないだろうか。
筆者は、20年以上前から食料危機への備えを訴えてきたが、今回のホルムズ海峡の封鎖で日本人の飢餓のリスクは一段と深刻化したと考えている。
日本の食料自給率は38%だが、先述の通り化学肥料の原料はほぼ100%輸入に依存しているし、野菜などの種についても約90%が海外からの輸入依存だ。
こうした要素を計算に入れた「最悪の想定」では、日本の実質的な食料自給率は約9.2%しかない。
しかも、この計算すら実はまだ甘いものだ。
日本のエネルギー自給率は約10%少々しかない。先述の通り燃料がなければ農業生産は止まる。このことを計算に入れると、日本の食料自給率はさらに下がる。実質数パーセントしかないと見ていいだろう。
農業生産はますます減少する
そのような中、農家は燃料、肥料、飼料をはじめ、あらゆる生産資材コストの高騰で苦しんでいる。その一方で米価などが下落し始め、農家の収入が減っている。食料危機が迫っているのにこんな状況では離農者が増え、農業生産はますます減少するだろう。
とはいえ食料品の価格が上がれば、約30年間も所得が減り続けている消費者も苦しい。そのため農家に必要な額と消費者が払える額のギャップを埋める政策が必要だ。
農家の所得が確保されれば、農家は安心して生産量を増やすことができる。そうなれば農作物の価格が下がり、消費者も安く買えて助かるうえ、自給率も上がる。海外では当たり前の政策だ。しかし、政府はそうした政策によって生産を増やし食料危機に備えるどころか、むしろ食料備蓄を減らそうとしているのだ。

