どんな人の配偶者になるかのほうが重要
結婚というイベントそのものよりも重要なのは、「配偶者としての役割」をどのように受け入れるかです。パートナーに合わせること、相手との衝突があってもうまく乗り越えること、幸福で充実した共同生活を築いていくことなどは、ビッグ・ファイブの中でも協調性を高めていく可能性を秘めています。
ただしここに関しても、これまでに何度も見てきたように、その変化は一瞬で起こるものではなく、時間をかけた環境への適応のなかで、徐々に生じてきた結果なのです。
さらに、どのような人物と結婚するかも大きな意味を持つと言えそうです。
情緒的に安定したパートナーと生活することで、不安傾向の強い人の神経症傾向が和らぐ「癒しの効果」のような現象が見られることもあるようです。その一方で、性格や価値観が似た者同士がお互いに惹かれ合うことによって、お互いがもともともっていた性格特性がさらに強化されることもありえます。
「結婚すれば人は変わる」と考えるのは、あまりに単純化しすぎのようです。「結婚するかしないか」ではなく、どのような相手とどのような生活を送っていくのかということのほうが、性格の変化という点からすると重要です。これは、考えてみれば当たり前のことのように思うのですが、見逃しがちなことでもあります。
親になることがもたらす意外な変化
結婚と同じように、「親になる」という出来事もまた、人を大きく変えると信じられがちなライフイベントです。
子育てを経験した大人たちは、「自分を変えるような経験だった」とか「子育ての中で自分も変わった」と感じることもあるようです。しかし、研究の中でもそういった変化は報告されているのでしょうか。
子どもが生まれれば責任感が芽生え、自然と成熟するものだ、という考え方は、私たちの社会の中でよく見られます。
心理学の研究の中でも、こうした直感を支持する理論があります。やはりそれも、ここまで何度か登場してきた「社会的投資の原理」です。子育てという、成熟した大人に特有の社会的役割に強くコミットしていくほど、勤勉性や情緒安定性といった、人間にとって成熟したイメージをもつ性格特性が高まっていくだろうという考え方です。
ところが、実際に子育てをする親を対象とした心理学の研究を見ていくと、社会的投資の原理からイメージされるような性格の変化とは、やや異なる可能性が示されています。

