「年収」へのこだわりは薄くなっている
「年収1000万以上、身長175cm以上、できれば次男……」
かつて婚活市場を席巻したこのような条件は、今、形を変え始めています。
婚活中の女性たちに聞けば、「自分と同じ400万円台からでも探す」「スペックより価値観」という言葉が返ってくるのです。
世間はこれを「女性たちが現実を見た」「高望みをやめた適正化だ」と言うかもしれません。
しかし、婚活現場のリアルを凝視すると、また別の景色が見えてきます。
スペックという大きな数字を譲歩した分、微細な「振る舞い」を巡る男女の対立は、熱を帯びているのです。
その象徴とも言えるのが「奢り・奢られ論争」です。
この時期は自ら動く人たちにとっては、婚活サービスを通じた出会いや飲み会、コンパが増える季節です。SNSでの「奢ってくれなかった」「割り勘にしたら連絡が途絶えた」という投稿も、さらに熱を帯びることでしょう。
なぜ、「100万円単位の年収」へのこだわりは薄れているにもかかわらず、「数千円単位」には、固執してしまうのでしょうか。
令和男性が直面する“お金の現実”
かつての結婚において、年収はわざわざ口に出すまでもない「前提」でした。
バブル期から90年代にかけて、女性たちは「年収」という生々しい数字ではなく、「社名」で男性を見ていました。「一流企業」「銀行員」「公務員」。それらの看板さえ確認できれば、将来の年収も退職金も、すべてが約束されていたからです。
そのため、この時代の「奢り・奢られ」もまた、男女双方にとってポジティブなステータスでした。
男性にとっての「奢り」は、自らの経済的な強さを誇示し、自尊心を満たすための「投資」。女性にとっての「奢られ」は、そんな男性から選ばれたという「承認の証」。
潤沢な資金背景をもとにした「お互いを高め合うロマンス」としての意味合いが強いものでした。
もちろん、今も「奢り」が消えたわけではありません。
2月に発表された明治安田総合研究所の「2026年 恋愛・結婚に関するアンケート調査」によれば、初デートで「すべて支払う」と回答した男性は43.6%にのぼります。
しかし、この数字には既婚者かつ54歳までの方が含まれている点は注意が必要です。
一方で、婚活の主戦場にいる未婚男性の現実は過酷です。
最新の「出生動向基本調査(結婚と出産に関する全国調査)」(2021年、国立社会保障・人口問題研究所)によれば、25~34歳の未婚男性で最も多い年収帯は300万円台。600万円を超える層は極めて限定的です。
多くの未婚男性にとって、全額を負担し続けるという行為は、自身の生活を削る「切実な代償」へと変質しているのです。


