Kポップ自体も進化したが
ところが22年6月、BTSはソロ活動に力を入れ「成長する時間」を確保するために活動を休止すると発表した。メンバーには韓国人男性の義務である兵役が迫っており、入隊すればそれぞれが1年半は活動できない。こうして世界を舞台とした快進撃は、突然断ち切られた。
それでもメンバー7人――RM(アールエム)、Jin(ジン)、SUGA(シュガ)、j-hope(ジェイホープ)、V(ヴィ)、Jimin(ジミン)、Jung Kook(ジョングク)――は入隊の時期を調整することで、休止中も世間の注目を引き付け続けた。22年12月に最年長のJinが入隊し25年6月にSUGAが除隊するまで、全員が不在とならないよう少なくとも1人はアーティストとして活動を続け、新作をリリースした。
兵役中のメンバーが休暇で戻ればみんなで写真を撮り、公開した。リードボーカルのJung Kookはファン向けコミュニティープラットフォームのウィバースでソロライブを生配信し、2000万の視聴者を集めた。
ソロで出したシングルやアルバムはおおむね好評で、Jiminの「Like Crazy」とJung Kookの「Seven」は全米チャートで初登場1位に輝いた。それでもソロ作品は売れ行きも注目度もグループに及ばず、交際報道――ようやく恋愛する時間ができたのだろう――が世間を騒がせることもあった。
音楽シーンも変化している。Kポップグループは今も世界を狙うが(専門家によれば、今やKポップのファンは90%が韓国以外にいる)、最も利益の大きい欧米市場の人々の関心はよそに移ったかにもみえる。
なかでも勢いがあるのがラテン系ポップス。プエルトリコ出身のバッド・バニーは今年のグラミー賞で年間最優秀アルバム賞を獲得し(スペイン語アルバムで史上初の快挙だ)、アメフトの優勝決定戦スーパーボウルでのステージ披露も話題を呼んだ。
Kポップ自体も韓国のポップ音楽という枠を超え、グローバルなジャンルへと進化している。例えば世界で人気のXGは、Kポップの育成システムと宣伝手法を取り入れたグループで拠点は韓国だが、7人のメンバーは全員が日本人だ。
アニメ『KPOPガールズ! デーモン・ハンターズ』はネットフリックスの配信で世界的にヒットし、今年のアカデミー賞で長編アニメーション賞と歌曲賞を獲得した。
劇中歌の作詞作曲と歌唱を担当したEJAE(イジェ)は韓国系アメリカ人で、韓国の芸能事務所の練習生からシンガーソングライターに転身した。これもKポップが韓国の枠組みを超えた証拠だろう。
BTSの稼ぎで数十億ドル規模の巨大芸能事務所へと成長したハイブでさえ、流行に合わせて所属アーティストを多様化している。グラミー賞候補になったKATSEYE(キャッツアイ)は多国籍のガールズグループで、サントス・ブラボスはラテンアメリカのボーイズグループだ。
「ポップミュージックは特定の音楽様式ではない。さまざまなジャンルの中で純粋に再生数など数字の勝負に勝った音楽が、結果的にそう定義される」と、Kポップを初めてiTunesで世界配信したDFSBコレクティブのバーニー・チョー社長は説明する。
「25年は世界最大のヒット曲のうち2曲がKポップで(ブラックピンクのロゼとブルーノ・マーズがコラボした「APT.」と、『デーモン・ハンターズ』の劇中歌「ゴールデン」)、最も売れたアルバム20枚の4分の1がKポップだったことを考えると、Kポップは世界で最も人気のある音楽ジャンルの1つになった。将来的には、韓国発または韓国系のポップ音楽という扱いになるかもしれない」
※この記事は 【前編】です。【後編】はメディアプラットフォーム「note」のニューズウィーク日本版公式アカウントで公開しています。


