「『一つの中国』の原則に反した」は本当か
高市総理の発言に中国政府は、「一つの中国」の原則に反したと猛反発している。
「一つの中国」を巡っては、中国側の手前味噌な解釈に加え、日本の識者による議論にも誤解が見られる。過去の経緯を検証してみたい。
2025年11月7日の衆議院予算委員会で高市総理は、台湾問題について「平和的解決を期待する立場だ」との長年来の基本的立場を述べつつ、一定の場合に「(集団的自衛権の行使が可能となる)存立危機事態になりうる」と発言した。
これに対し、在日中国大使館は、「露骨で挑発的な発言であり、中国の内政への乱暴な干渉で、核心的利益への挑戦だ」と批判した。
林剣中国外務省報道官も、「『一つの中国』原則に深刻に背く」ものであり、「中国の核心的利益に戦いを挑み、主権を侵犯した」「断固として反対し、決して許さない」などと居丈高に反発した。
では、中国が主張する「一つの中国」の原則とは何か?
台湾問題は「中国の内政」なのか?
1972年の国交正常化の際に発出された日中共同声明は、次のとおり規定している。
「中華人民共和国政府は、台湾が中華人民共和国の領土の不可分の一部であることを重ねて表明する。日本国政府は、この中華人民共和国政府の立場を十分理解し、尊重し、ポツダム宣言第八項に基づく立場を堅持する」(第三項)
日本は同意も受け入れもしていない
中国側がこだわったのは、「台湾は中華人民共和国の領土の不可分の一部」との立場だった。
ところが、日本はそれに同意も受け入れもしなかった。だからこそ、「両国が合意する」との書き方ではなく、互いの立場を併記したのだ。
ちなみに、同声明の第二項では、「日本国政府は、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることを承認する」と明確に規定している。第二項は「承認する」の一方、第三項では「十分理解し、尊重」にとどまるのだ。この対比は誰の目にも明らかだ。
すなわち、中華人民共和国政府が中国の唯一の合法政府であることは承認しても、台湾が中華人民共和国の領土の一部であることは承認していないのだ。

