物事を強要してはならない

また、生来のイノベーターはそうでない人と比べて、未来を構想する傾向が強いことが、私の調査で明らかになっている。彼らはより大きな全体像を思い描き、物事がなぜ重要なのかを説明できなくても理解できる。この能力の負の面として、彼らは意味のない仕事には魅力を感じない。この「すべてかゼロか」の姿勢は、芸術家肌の人間の双極性気質の表れだ。彼らは創造力を刺激されたときにのみ、すばらしい仕事をする。そして創造力は意味によって刺激される。

小説家のジョン・アーヴィングは「私が書くことに一生懸命になれるのは、それが私にとって仕事ではないからだ」と言った。一方で、おもしろい仕事をすることにはさほど関心がない社員がいる。彼らは毎日会社に行って帰るだけでよしとしており、外的報酬によって動く。平凡な仕事や意味のない仕事はこうした社員に割り当てるべきだ。

創造性は通常、より大きな自由と柔軟性を与えられたとき高められる。堅固な仕組みや秩序や予測可能性を好む人はクリエーティブな人間ではないだろう。だが人はみな、自然発生的で予測不可能な状況に置かれると、普段より大きな創造性を発揮する可能性が高い。習慣に頼ることができないからだ。

創造力豊かな社員に何かを強要してはならない。プロセスや仕組みに無理やり従わせようとしてはいけないのだ。彼らが会社以外の場所で就業時間以外の時間に働くことを認めよう。どこにいるのか、何をしているのか、それをどのような方法でやるのかといった質問をしてはならない。多くの一流アスリートが小さいチームから大きいチームに移籍すると力を発揮できなくなるのはこのためであり、ベンチャー企業の創業者が、自分のつくった会社が大手に買収された後もその会社の経営を任されることを通常喜ばないのはこのためだ。