――仮に増税されると、社会的な弱者への影響が懸念されるが。
【伊奈】比較的所得が低い方、1人1台が必要な地域にいる方などに影響が及ぶ。日本は急速に超高齢化していて、公共交通機関がない地域にも年金で生活しているお年寄りは増えている。必需品である軽自動車が増税されたら、特に社会的な弱者が本当に困ってしまう。霞が関という雲上で、「このくらいなら」と税額を計算するのではなく、生活者に密着した立場で税制を考えていただきたい。交通網が発達した都会だけが日本ではないし、高額所得者だけが日本人ではない。頑張っている人たちは日本中にいて、そうした人の支えとなる軽をつくっていることに、我々メーカーは誇りを持っている。
――TPP(環太平洋経済連携協定)や日欧EPA(経済連携協定)の交渉で、軽自動車税は必ず問題になる。今回、EPAの流れから総務省は増税へと切り込んできたフシがあるが。
【伊奈】軽自動車はどこの国のメーカーがつくっても、税制は同じ。優遇税制でなければ、非関税障壁でもない。自由につくってもらってかまわない。そして、鈴木会長が言うように、つくれないのならダイハツもOEMで応える(笑)。
――1998年の規格改定当初、大きくなったボディーに対しエンジンが非力なため軽自動車の燃費性能が悪かった。それから15年が経過して燃費は大幅に改善した。これからの軽はどうなる。
【伊奈】ハイブリッド車、電気自動車(EV)や燃料電池車など、環境車両が多様に共存する社会になるだろう。すでにリッター30キロメートルを超える低燃費を実現しているが、これからも内燃機関を徹底的に改良して、環境性能を高めていく。製造に使用するエネルギーが少なく、材料も少ない軽は、そもそもがエコカーである。小さくて軽い内燃機関の車は、新興国でも求められる。超高齢化社会を迎えていく日本では、運転しやすく低燃費な軽自動車の役割はますます大きくなる。
ダイハツ工業会長 伊奈功一
1973年、名古屋工大大学院修了後、トヨタ入社。2002年取締役、03年常務役員。07年専務に就任。09年ダイハツ副社長に転じ10年に社長就任。13年より会長。
1973年、名古屋工大大学院修了後、トヨタ入社。2002年取締役、03年常務役員。07年専務に就任。09年ダイハツ副社長に転じ10年に社長就任。13年より会長。
(的野弘路、向井 渉=撮影)