65歳を「人生のやり直し」の出発点と考えてみる

「自分の人生、これでよかったのだろうか」という問いを抱えたまま晩年を迎える人は、実に多くいます。医学部の教授として長年頑張ってきた人が、定年を迎えた途端に「和田はいいよね」と言い始めることがあります。教授になるために、上の人間にヘコヘコしながら我慢を重ねてきた末に、早めに開業した同期が65歳でもバリバリ稼いでいる姿を見て、羨ましいと感じるのです。

しかし、羨ましいと思うなら、65歳からでも開業はできます。元教授という肩書があれば、むしろ患者さんが集まりやすいかもしれません。仕事に限りません。私生活においてパートナー選びを間違えたと思うなら、新しいパートナーを見つけることだって選択肢の一つです。

私が臨床心理の大学院の教授をしていた頃、毎年一人ほど、大企業の管理職を定年退職した方が大学院を受験して入学してきました。人間関係に苦労したからちゃんと心理を学びたい、と言って入学し、臨床心理士の資格を取って企業のメンタルヘルスの仕事を始める。臨床心理士の年収は400万円程度ですが、年金と合わせれば十分な生活ができます。過去の選択が間違っていたと思うなら、くよくよするのではなく、新しい人生を始めればいいのです。

「参照点」を下げれば、今日から幸せになれる

行動経済学者のダニエル・カーネマンは、「参照点」という理論を提唱しています。1億円を持っている人でも1万円損すれば不幸な気持ちになる。1000円しか持っていない人でも100円拾えば幸せな気持ちになる。幸福感は絶対値ではなく、自分の基準点との比較によって決まるというものです。

現役時代に豪邸に住み、毎日数万円の食事をしていた人が、5億円の老人ホームに入って5000円の食事を食べても「ショボい」と感じるかもしれません。一方、かつて食べるものにも困っていた人が、特別養護老人ホームで3品のおかずが出ることを心から幸せに感じることもあるでしょう。参照点を上手に低くできた人ほど、晩年の幸福感が高いのです。

「どう死ぬかは選べなくても、どう生きるかはあなたが決められる」――これが、私が最も伝えたかったことです。過去は変えられません。しかし、今からでも間に合います。「してしまった後悔」を抱えながらも、今この瞬間から新しい何かを始めることと年齢は関係ありません。幸福感を高めるための一歩は、何歳からでも踏み出せるのです。

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