「気を遣う人間関係」は、年をとったら手放していい

晩年に「してしまった後悔」として語られるものの中に、人間関係の問題もあります。気を遣う人間関係を維持し続けた末に、本当に気の合う友人を作れなかった、というものです。

友人関係で大切なのは、数よりも質です。本音を丸出しにして話しても向こうが怒らない、言いたい放題言っていても受け入れてもらえる、ある種の無礼講が許される――そういう相手こそが、本当の意味での友人です。ガード下の飲み屋で何でも話せるような関係が、一番心の支えになります。

一方で、昔の上司部下の関係だったとか、地元の仲間内で気を遣い続けているとか、そういった人間関係は、年をとればとるほど疲れるだけです。田舎に帰るたびに昔のヒエラルキーに引きずられることに比べたら、「あいつはお高く止まっている」と悪口を言わるくらい、たいしたことではありません。出世や世間体がものを言わなくなった年齢だからこそ、疲れる人間関係を手放す勇気が大切です。

恨みの感情についても同じです。もっとも、どうしても消えない恨みを、無理に消そうとする必要はありません。恨みの感情を抱えながらも、気の合う人とは仲良くする――人間関係はその一人だけではないのですから、両立することは十分に可能です。好きな人と付き合い、気持ちの良い時間を増やすことが、免疫力を上げ、幸福感を高めることにつながります。

プレジデント公式YouTubeチャンネル「人生を犠牲にしない“しがらみ”の捨て方」より
プレジデント公式YouTubeチャンネル「人生を犠牲にしない“しがらみ”の捨て方」より

血圧170を放置しても、9割以上は脳卒中になっていない

健康に関する後悔も、晩年に多く聞かれます。「もっと摂生しておけばよかった」という声がある一方で、実は「我慢しすぎた」という後悔も少なくありません。

私自身、血圧が200以上ある状態を5年間放置して、今は心不全を抱えています。ただ、ある手術の前に血圧と血糖値を正常値まで下げたところ、ひどく眠くなってしまいました。これが一生続くなら、血圧は高いままでよいと正直思いました。

実際、有名なアメリカの大規模調査があります。血圧が170の人を、正常値まで下げた場合と放置した場合に分けて、6年後の脳卒中の発症率を比べたものです。正常値まで下げた人は5.2%、放置した人は8.2%でした。確かに差はあります。しかし最も重要なのは、いろんな我慢をして薬を飲んで血圧を正常値まで下げても、5%以上の人が脳卒中になってしまったということです。しかも放置した人の9割以上は、脳卒中にはなっていないのです。

それに、日本人の死因のトップはがんです。心筋梗塞で亡くなる人の12倍、脳出血で亡くなる人の10倍の人ががんで亡くなっています。一般的な健康常識――血圧を下げる、血糖値を下げる、痩せろ――はすべて心筋梗塞と脳出血の予防のためのものです。健康常識のために我慢を重ねて免疫力が落ち、がんになってしまうことだってあるのです。必要以上の我慢は、必ずしも健康につながらない。この事実を、もっと多くの人に知ってほしいと思います。

なりたくない病気を聞かれたら「うつ病」と答える理由

それよりも、私が「残りの人生でなりたくない病気は何か」と聞かれたら、真っ先に「うつ病」と答えます。認知症でも寝たきりでもがんでもなく、うつ病です。

うつ病になった人に聞くと、高熱が出たときのようなだるさが毎日続くと言います。しかも、いつ楽になるかわかりません。何を食べても味がしない、食欲も落ちる。好きなことへの興味も、喜びもすべて消えてしまうのです。本人にとっては、本当につらい状態です。

うつ病の予防にとって大切なのは、肉などのタンパク質をしっかり摂ることです。タンパク質からセロトニンが作られ、コレステロールがそのセロトニンを脳に運びます。だから、コレステロールを下げすぎることにも注意が必要なのです。加えて、日光を浴びること、軽い運動をすること。これらがセロトニンを増やし、うつになりにくい体をつくります。

物の考え方も重要です。「かくあるべし」という思考は、その通りにならなかった時に自分を責めてしまい、うつへと向かわせます。もう一つ気をつけてほしいのが、「この道しかない」という考え方です。開成から東大、財務省と歩んできた人が大きな挫折をしたとき、最悪の選択をしてしまうことがあります。しかしそれは、挫折を知らないからではなく、「ほかの道を知らなかったから」だと私は思っています。ようは、「人生色々」と考えられる人ほど、うつになりにくいのです。