掛け軸、油彩画、写真、鉄瓶、アイロン
堀川さんが代表を務めるエステートセール会社「ポジティブシンキング」ではこれまで400件あまりの依頼を受けており、常時2500点ほどを出品している。
2025年3月、ポジティブシンキングの倉庫を訪ねた。群馬県前橋市の郊外にある閑静な住宅街におよそ100坪の2階建て倉庫があり、内部にびっしりと並べられた棚には大量の家具や絵画、骨董品などが所狭しと置かれている。
江戸時代の浮世絵や掛け軸、油彩画、大正時代の紙焼き写真、東南アジア風の彫刻が目を引く机や鉄瓶、夫婦茶碗に年季を感じさせる雛人形など、アンティークショップを思わせる品揃えだ。つい先日に私が心を震わせた炭火アイロンも複数台目に入った。そのほか、中古車などの大物は別の場所で保管しているという。
それらが置かれた棚には依頼者の名前や依頼日を記載した用紙が貼られていた。用紙のメモから、海外のオークションサイトに出品されたものや出品待ちとなっているもの、修理後に養生しているものなどが混在していることが分かる。すべて預かりモノであり、かつてオーナーがいて、新たな所有者を待っている品々だ。
現代版の形見分けのようなもの
ただ、素人目にもいかにも値が張るような調度品もあれば、一見どこにでもありそうな子供のオモチャも置かれている。扱う価値の幅は相当に広い様子が見て取れた。そこには堀川さんの矜持がある。
「私は『大量消費の空白の30年』と呼んでいますが、現代は大量生産と大量消費の時代を経て、モノがあふれています。すると愛用品を子供に託すとか、子供が親の形見を使い続けるといった発想になりにくい。しかし、良いモノを丁寧に使えばもっと良さが現れますし、その価値を受け止めて大切にされる方もたくさんいらっしゃいます。そうした価値をつないでいくことが私の役目だと思っているんです。日本流のエステートセールはいわば、現代版の形見分けのようなものだと思っています」
そう言われて改めて倉庫内を見渡すと、ほとんどが私の生まれるより前に作られたものだと気づかされた。半世紀どころか一世紀以上前の職人の手によるものばかりだ。子供のオモチャでさえ、よく見れば一点モノだった。堀川さんは意識的に大量生産時代より前のもの、あるいは大量生産時代においても作り手の腕が光るものに比重を置いているという。
親の遺品などを「売る」という行為は、最終的に誰かが使う、あるいは所有することがゴールになる。そして、ゴールに至ったときにどれだけ価値を感じてもらえるかは、買い手や販路に依るところが大きい。だからこそ販路選びは重要だが、見定めるのは簡単ではない。このバランスをとるのが肝要だ。



