<成長を最優先するとした高市早苗首相は施政方針演説で裁量労働制の見直しにも言及したが、この施策は本当の意味で成長を目指したものとは言い難い:加谷珪一>
深夜のオフィスで業務をするビジネスパーソン
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高市早苗首相は、先の衆院選を受けて召集された特別国会において施政方針演説を行った。通常、施政方針演説は毎年1月に召集される通常国会で行われるが、今回の通常国会は冒頭で解散となったため選挙後の特別国会で演説が実施された。

事前の予想どおり、高市氏は成長を最優先するとして「責任ある積極財政」を強く主張したが、その中に裁量労働制の見直しが含まれていたことが波紋を呼んでいる。

かねてからの持論であった財政出動強化による成長路線というのは、その手法や効果、あるいはそれに伴う財政悪化懸念の是非は別にして、一つの考え方と言ってよい。だが、働き方改革によって残業時間に規制を加えたにもかかわらず、それを骨抜きにしかねない施策を実施するというのは、本当の意味で成長を目指した施策とは言い難い。

日本では労使間で協定を結んだ場合、事実上、青天井で残業を労働者に要請できるという、ある種の法の抜け穴があり(36協定)、一部の労働者が無制限残業を強いられるという問題が指摘されてきた。実際、諸外国と比較すると日本人の労働時間はかなり長かった。

働き方改革による残業規制はうまく機能していない

こうした事態を打開するため、政府は働き方改革関連法を成立させ、労働時間の上限を設定することで過度な残業が起きないよう規制を加えた。この施策は大きな効果を発揮し、大企業を中心に多くの企業で残業時間が減ったが、全体的に見た場合、この施策がうまく機能したとは言い難い。

本来こうした残業規制というのは、デジタル化など企業の生産性向上策とセットにする必要がある。これを行わないまま、単純に労働時間だけを減らしてしまうと企業の生産量が減り、業績が悪化してしまう。