データ活用に慎重論も
もっとも、「知らぬ間の貢献」という構図は技術の進歩にはプラスだが、倫理面で問題提起も起きている。
ポピュラーサイエンスは、地図アプリ「Waze」の事例を挙げる。ユーザーの位置データが、捜査目的で法執行機関へ渡っていたとされるケースだ。
ポケモンGOのナイアンティック・スペーシャルは現時点で、VPS(ビジュアルポジショニングシステム)データを当局に提供する計画を示していない。だが、写真に映った目印から正確な位置を割り出せるこの技術に法執行機関が目をつけても不思議ではないと、ポピュラーサイエンスは指摘する。
一方、ナイアンティックもこうしたリスクを自覚している。欧州ニュース専門放送局のユーロニュースによれば、ポケモンGOのスキャン機能はオプトイン(初期状態では不使用となっており、利用者が自ら参加意志を示して初めてデータが提供される)方式で、プレイヤーがランドマークや公共スペースの短い動画を選んで提出する仕組みだ。
同社は2019年以降、データの収集・利用について透明性を保ってきたと表明している。
地図はもはやロボットが読むもの
ポケモンGOから始まった地図に、完成の日は来ない。街は絶え間なく変化し、ロボットが歩道を走るたびに、地図はまた少し精密になる。
MITテクノロジーレビューの取材に応じたナイアンティック・スペーシャルのハンケCEOは、「ロボティクスのカンブリア爆発(爆発的な多様化)が起きている」と語る。
地図を読むのは人間でなく、今後は機械が主体になっていくとハンケ氏は語る。「今の時代のテーマは、機械が世界を理解する上で有益な記述方式を完成させることです」
同社は配達ロボット企業ココとの提携を手始めに、地図上のあらゆる物体に属性情報をタグ付けし、機械が自らの位置と周囲で何が起きているのかを把握できる「リビングマップ」の構築を進めている。絶えず更新される生きた地図だ。
ポケモンGOのプレイヤーが街を歩いて蓄えた画像を頼りに、配達ロボットが道を選ぶ。そのロボットがまた、次の世代のロボットに向けて、新たなデータを持ち帰る。遊びから生まれたデータを出発点に、ロボットたちが世代を超えて受け継ぐデジタルの地図が育とうとしている。


