ユーザーに画像を撮らせる仕組みづくり
ポケモンGOはそもそも、現実世界の特定の場所までプレイヤーを歩かせるゲームだ。バトルができる「ジム」やマップ上に出現するポケモンをゲットするため、ユーザーは喜んで地図のあちこちを歩き回る。
同じスポットに大勢が入れ替わり訪れるうちに、晴れの日も雨の日も、昼も夜も、さまざまな角度と高さから撮られた画像が、誰に頼まれるでもなく集まっていった。
米科学技術メディアのポピュラーサイエンスによると、2016年のピーク時にはアクティブユーザーが月間約2億3000万人に達した。一時の熱狂こそ冷めたものの、2026年の現在も推定約5000万人がプレイを続けている。世界中の街角で、日々新たな画像が生まれ続けているのだ。
データの蓄積を一気に加速させたのが、2020年に追加された「フィールドリサーチ」機能だ。街角の彫像やランドマークにスマートフォンのカメラをかざせば、ゲーム内報酬がもらえる。プレイヤーは報酬を目指して撮影を繰り返し、そのたびに現実世界の画像データが開発元のサーバーへ送られていった。「ポケモンバトルアリーナ」と呼ばれる対戦エリアにも、バトル目当てのプレイヤーが密集し、格好のデータ集積スポットになった。
プレイヤー自身に、地図づくりに協力していた自覚はない。プレイヤーを誘導する遊びの仕掛けそのものが、世界規模の3Dマップをつくり上げる原動力となった。
配達ロボット1000台に欠けていた「直感」
ココ・ロボティクスの共同創業者であるザック・ラッシュCEOは、ロボット配達の壁は「ロボットにはまだ人間のような直感がない」ことに尽きると端的に語る。「人間なら『GPSが機能していないけど、おそらくここが正しい場所だろう』と理解できます」
米ビジネス誌のフォーチュンによると、ココはロサンゼルスやシカゴ、マイアミ、ジャージーシティ、ヘルシンキなど国内外の都市に約1000台のロボットを展開し、すでに数百万マイルを走破してきた。それだけの距離を重ねてなお、高層ビルが林立するエリアではGPS信号が遮られたり乱反射したりし、ロボットは正確な位置をつかめない。
「ロボットが間違った場所で注文を待っていたら、顧客にとって最悪の体験になります」とラッシュ氏。だからこそ期待を寄せるのが、ナイアンティック・スペーシャルのVPS(ビジュアル・ポジショニング・システム=視覚測位システム)だ。膨大な画像による3Dマップを頼りに、「直感」のないロボットを、お腹を空かせたユーザーが待つ正しい住所へと導く。
協業はまだ初期段階にあるとラッシュ氏は認めつつも、「配達場所をより正確に特定できれば、顧客は喜んでくれます」と語った。
衛星より正確に位置を割り出す
視覚測位システムは、衛星信号ではなく、カメラが捉える風景を直接解析して位置を割り出す。人間が自分の居場所を直感するのと同じだ。
フォーチュンが伝える原理はシンプルだ。ロボットのカメラがリアルタイムで周囲を撮影し、あらかじめ蓄えた膨大な画像データベースと照合して同じ場所を探し当てる。それだけで、位置と方角がわかる。

