日本人にはどんなメリットがある?

【松田さん】海外に家族がいるとか、海外旅行とかですかね。日本独自のキャッシュカードや電子決済はまず使えないんで、現地通貨を持ち歩くことになりますが、紛失や盗難リスクがある。私はアテネで1日に2回スリにあって、1回目のスリでクレジットカードを全部止めたあと、別に持っていた現金を2回目のスリにやられて天を仰ぎました。世界的な観光地にはスリの達人がいるんで、ご注意ください。

【アワタニ】それは大変でしたね……。

【松田さん】ステーブルコインなら、ウォレット(*3)さえあれば「ゴメンちょっと送って」も通用しますから。ただ、JPYCを現地通貨に替えられるようになるのが普及の条件です。アテネのマクドナルドやスタバでJPYCは使えないでしょうし。

【アワタニ】うーん、なかなか厳しそうですね。

【松田さん】しかも米国という覇権国家が後押しする形で、世界各国でドル建てのステーブルコインのやり取りを始めるんですよ。日本では「送金あたり100万円が上限」とか細かい規制を設けて、慎重に始めるんじゃないかな。

【アワタニ】いかにも日本っぽいやり方です。

【松田さん】でも「黒船」が本当に来てしまったら、見直しされるんじゃないかと見ています。円建てステーブルコインで国内市場を守るなんて悠長な考えは、トランプ政権の財務長官がベッセントであるかぎり、無理だと思います。彼は暗号資産、なかでもステーブルコインには相当肩入れしていますから。

コルレス決済とSWIFT決済

【松田さん】ステーブルコインで実際に貿易決済をし始めたら、いよいよ国際送金で使われているコルレス決済(*4)とSWIFT決済(*5)ってのがなくなるかもしれません。

【アワタニ】なんすか、それ。

【松田さん】ほら、前にお話しした国際送金バケツリレー問題の主役ですよ(第1回参照)。

【アワタニ】あ、あれか!

【松田さん】よく国際送金を扱うSWIFTが問題って言うんですが、いまの国際送金はコルレス方式って言って、こっちのほうが問題なんです。たとえばドルの最終決済は米国にしかできなくて。

*3 ウォレット
暗号資産の保管・管理ツール。ソフトウェア型(MetaMaskなど)やハードウェア型(Ledger)があり、秘密鍵を管理し送受信などを行う。
*4 コルレス決済
国外の銀行に外貨預金口座を開設し、そこから資金を送金するしくみ。現代における国際送金の基本。
*5 SWIFT決済
国際銀行間通信協会(SWIFT)が運営する国際送金の通信ネットワーク。銀行間でメッセージをやり取りし送金情報を伝達する。世界中の銀行が利用する標準システム。