駅前が衰退しているわけではない

藤が丘ショッピングセンターが廃墟化しているのは、駅前の再整備が決まり、店舗が閉店したり移転したりしたためだ。核店舗であったスーパーのマザーズは2024年10月に閉店した。他にも複数の店舗が駅前の再整備を理由に閉店、移転している。

藤が丘ショッピングセンターは1967(昭和42)年7月にオープンした施設であるにもかかわらず、開業時から見た目が大きく変わらず、施設名が変更されることもなく残ってきた。

59年も前に開業し、姿を変えずに現存しているショッピングセンターは数少ない。とっくに閉店したり、別のショッピングセンターにリニューアルされたりしていてもおかしくないはずである。

同じ横浜市青葉区の田園都市線沿いで、同年にオープンした青葉台ショッピングセンターは2000(平成12)年に青葉台東急スクエアにリニューアルされ、棟も増え、さらに次なる再開発が検討されている。1968年(昭和43)に開業したたまプラーザショッピングセンターはすでに閉店。隣には巨大ショッピングセンターのたまプラーザテラスがつくられている。

マンションの低層階に青葉台ショッピングセンターとしてオープンした青葉台東急スクエアNorth。2025年2月に閉店し、再開発が検討されている
筆者撮影
マンションの低層階に青葉台ショッピングセンターとしてオープンした青葉台東急スクエアNorth。2025年2月に閉店し、再開発が検討されている
新しくたまプラーザテラスがつくられ、たまプラーザショッピングセンターとしてオープンした部分は閉鎖されている
筆者撮影
新しくたまプラーザテラスがつくられ、たまプラーザショッピングセンターとしてオープンした部分は閉鎖されている

小型商業施設が生き残れる商圏がある

なぜ周辺のショッピングセンターが刷新されるなか、藤が丘ショッピングセンターは約60年間にわたって営業しつづけられたのだろうか。

駅前施設だから、と考える人も少なくないだろう。だが、駅前に立地しているからといって施設が長く存続できるとは限らない。

モータリゼーションと郊外の大型ショッピングセンターにより、かつて一等地として栄えた駅前の中心市街地がゴーストタウン化している事例が数多くある。たとえば千葉県の木更津駅前は、1988(昭和63)年に木更津そごうを核とするショッピングセンターが開発され、賑わいを見せた。

ところが1997(平成9)年に東京湾アクアラインが開通すると、車や高速バスで神奈川・東京方面へ向かう人が増加し、駅の利用者が激減。アクアラインからアクセスの良いロードサイドの大型施設に活気が移り、駅前ショッピングセンターは廃墟化している。

車への依存度が高い地域だと、この傾向がより顕著に表れている。岩手県の北上駅前では1986(昭和61)年、イトーヨーカドーや地元専門店の入る商業施設が建てられた。しかし、同様にロードサイドの大型施設に太刀打ちできず、店舗が相次いで撤退。駅前は閑散としている。

一方、藤が丘駅前を歩いてみると、空洞化していないことがよくわかる。藤が丘駅の周辺には、アポラン藤が丘やT-BOX横浜藤が丘といった商業施設が存在している。

アポラン藤が丘は東急ストアとスポーツジムを核とし、パソコン教室や塾、クリニックなど日常生活に便利な店舗が集積。T-BOX横浜藤が丘はハックドラッグとダイソー、クリニックが入っている。

藤が丘の駅前から徒歩2~3分に位置するアポラン藤が丘
筆者撮影
藤が丘の駅前から徒歩2~3分に位置するアポラン藤が丘
T-BOX横浜藤が丘店
筆者撮影
T-BOX横浜藤が丘店

この2施設は平日の昼間でも十分な客入りだ。藤が丘駅周辺は、日常利用の小型商業施設であれば十分成り立つ商圏を抱えているとわかる。

だからこそ藤が丘ショッピングセンターは、1967(昭和42)年7月の開業当初から営業を続けてこられたと考えられる。