世界に対して主導的立場に
2.日本が「エネルギー輸出国」になる
日本はこれまで、「資源小国」として国際社会の中で一定の制約を受けながら成長してきました。国内に石油や天然ガスがほとんどなく、エネルギーの多くを海外からの輸入に依存せざるを得なかったからです。
その一方で、日本はその弱点を補うように、省エネ技術や高効率な製造技術を磨き上げ、技術立国としての地位を築いてきました。
核融合が実用化され、日本がその分野で主導的な立場を確立できた場合、日本が担う役割は多くあると思います。一つは核融合炉自体を輸出する。
あるいは、重要パーツを輸出することです。この場合は、製品と共に技術者を派遣することもできるし、現地の人を育てることもできます。
また、核融合炉で作ったエネルギーを石油や天然ガスのように売ることも可能です。この場合はエネルギーを貯蔵し、運ぶ形にしなければなりません。
現在の時点では、水素が適していると思います。いずれにしてもエネルギーに関して、「ひたすら買う立場」から世界に対して主導的立場になることができます。
日本が強みを持つ、精密製造技術と材料開発力
日本がこの分野で有利だと考えられる理由の一つが、長年にわたって培ってきた原子力分野での経験です。
1970年代以降、日本は多数の商用原子力発電所を建設・運用してきました。その中で、原子炉製造技術、運転のノウハウ、放射線管理、冷却技術、材料の健全性評価、トラブル対応など、極めて高い運用ノウハウを蓄積してきました。
核融合と核分裂は別の技術ですが、トリチウムの取り扱いや中性子照射に耐える材料の開発など、共通する技術要素も少なくありません。これらの知見は、核融合炉を現実の装置として成立させるうえで重要な基盤になります。
さらに、日本が特に強みを持つのが、精密製造技術と材料開発力です。核融合炉では、超電導コイルに数十キロアンペアの電流を流し、ミリ秒単位で磁場を制御しながら、1億度を超えるプラズマを安定して閉じ込めなければなりません。そのため、部品の寸法や材料特性に極めて厳しい精度が求められます。
こうした分野は、日本の「精緻なモノづくり」が最も力を発揮する領域です。たとえば京都フュージョニアリングは、ITER計画などの国際プロジェクトと連携しながら、トリチウム燃料サイクル、排熱利用技術、中性子遮蔽材料といった核融合炉の周辺技術を専門的に開発しています。
前述した通り、これらは特定の方式に依存せず、どのタイプの核融合炉にも不可欠な技術であり、すでに欧州や中東との連携も始まっています。
ここで重要なのは、日本が「理論研究」だけではなく、「商業化を見据えた実装技術」で存在感を示している点です。核融合が実験段階を越え、実際の産業になるとき、日本の役割は一気に大きくなる可能性があります。

