核融合×水素で生まれる「エネルギー輸出」
核融合炉が商用段階に入ると、日本は膨大な電力と、1000度を超える高温の熱を安定的に得ることができます。ここで注目すべきなのは、核融合が生み出す価値は「電気」だけではないという点です。
この高温の熱と電力を組み合わせることで、多様な副産物をつくることが可能になります。
その代表例が、水素の製造です。水素を用いて発電を行なったり、自動車の燃料にしたりすることができますが、現在主流となって生産されている水素は、天然ガスなどを原料とする「グレー水素」であり、製造過程で多量のCO2を排出します。
一方、太陽光、風力など再生可能エネルギーを使い、水を電気分解してつくった「グリーン水素」はクリーンですが、天候に左右されやすく、大規模・安定供給には課題があります。
核融合炉を使えば、高温の熱と大量の電力を安定的に利用できるため、高効率かつクリーンな水素製造が可能になります。しかも24時間安定して稼働できる点が大きな強みです。
この水素を液化し、専用タンカーで運ぶ方法はすでに現実のものになっています。たとえば川崎重工業は、世界初の液化水素運搬船を開発するなど、水素輸送技術で先行しています。
こうした水素輸出は、単なる外貨獲得手段にとどまりません。日本がアジアや中東、アフリカ、欧州に対してクリーンなエネルギーを提供することで、従来の「エネルギー依存を利用した外交」とは逆の、「エネルギー供給による信頼構築外交」が可能になります。
これは、日本が長年行なってきたODA(政府開発援助)を、エネルギーとインフラの分野で進化させた形とも言えるでしょう。
日本は石油危機を経験し、省エネと効率化で生き延びてきました。その延長線上に、核融合と水素によって「エネルギーを提供する国」へと立場を転換する未来が見えてきています。
これは、日本にとってまさに歴史的な構造転換だと言えます。


