高市首相が国家戦略として取り込み始めた、核融合発電の狙いは何か。元日本原子力研究所研究員で作家の高嶋哲夫さんは「経済安全保障政策を見ていくと、核融合は『投資対象として位置づけられ始めている』ことが読み取れる。『電気をつくる技術』ではなく、『次世代の巨大産業システム』として捉えている点に、日本独自の戦略性がある」という――。

※本稿は、高嶋哲夫『核融合発電で世界はこう変わる』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。

原子炉のイメージ
写真=iStock.com/koto_feja
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核分裂発電と核融合発電の違い

水素のような軽い原子(水素の同位体)を融合させて、より重い原子になるときに出るエネルギーを利用して発電を行なうのが、核融合発電です。太陽が光り続けているのは、内部で核融合反応が起こっているからです。なお、従来の原子力発電は「核分裂」です。

核融合の燃料となる重水素と三重水素は海水から取れるのでほぼ無限にあり、世界中で手に入ります。装置にトラブルが起こると、燃料のプラズマ自体が生成されず消えてしまいます。高レベル放射性物質や二酸化炭素も出しません。

核融合では、少量の燃料で大量のエネルギーが生み出されます。海水ポリタンク1本分、18リットルに含まれる重水素から、石油ポリタンク250本分に相当するエネルギーが生み出されます。

核融合の燃料になる三重水素、つまりトリチウムが漏れたらどうなるのかと心配する方もいらっしゃいます。福島第一原発の処理水で有名になったトリチウムの出す放射線のエネルギーは極めて微弱で、皮膚でさえぎることができます。ですから、体外の放射性物質から影響を受ける「外部被曝ひばく」はほとんど発生しません。

また、仮にトリチウム水を飲み込んだ場合でも、通常の水と同じように体の外へ排出され、臓器などに蓄積されていくことはないと見られており、「内部被曝」のリスクも問題視する必要はないと言えます。