米国・EU・中国との比較――日本の狙う先は
次に、他国の核融合政策と比較してみましょう。ここで重要なのは、「どの国が一番進んでいるか」ではなく、「どの国がどのポジションを取ろうとしているか」です。
米国は、明確に民間主導型のモデルを選択しています。国家は規制緩和、基礎研究、初期資金の呼び水を担い、実際の炉開発や技術革新はスタートアップに委ねる。
莫大なリスクを取れるベンチャーキャピタルと、優秀な研究者を引き寄せる市場が、その前提にあります。結果として、米国では炉本体を作ろうとする企業が複数並立し、「どれが勝つか」を市場で決める構図が生まれています。
EUは、これとは対照的に、国際協調型・公共主導型です。ITERに象徴されるように、各国が役割分担し、巨大プロジェクトを着実に進めるスタイルを取っています。
スピードは米国に比べて遅いものの、安全性、標準化、制度整備に強みがあります。日本の核融合実験装置JT‐60SAがEUとの共同プロジェクトであることは、日本がこの路線に深く関与している証拠でもあります。
中国は、国家主導・長期集中投資型です。研究者の数、装置の建設スピード、国家計画への組み込み方は非常に強力で、技術を「戦略物資」として扱っています。透明性の低さという課題はありますが、「やると決めたら止まらない」点で、最も手強い存在です。
核融合は「次世代の巨大産業システム」に
こうした中で、日本が米国型を真似るのは現実的ではありません。巨額のリスクマネーを民間が単独で背負う構造は、日本には適しません。一方で、中国型の国家集中モデルも、社会制度や政治文化の違いから難しい。
だとすると、日本の現実的な立ち位置は、「EU型の国際協調を軸にしつつ、民間の強みを部分的に活かす」路線になります。
その中で、日本が最も優位に立てるのが、炉本体ではなく、周辺技術、装置工学、材料、制御、安全設計といった分野です。高市氏が核融合を成長戦略に組み込む意義は、まさにここにあるでしょう。
核融合を「電気をつくる技術」ではなく、「次世代の巨大産業システム」として捉えている点に、日本独自の戦略性があると思います。


