日本の国家戦略としての位置づけ

日本の政治の最前線において、核融合エネルギーが単なる研究テーマではなく、国家戦略の中心課題として取り扱われ始めています。

その象徴的な出来事が、2020年代前半における政治リーダーたちの動きです。核融合は長年、研究者や技術者の間で「未来のエネルギー」として語られてきましたが、ここにきて政府の成長戦略や政策の主要な柱として扱われるようになっています。

なかでも注目されるのが、高市早苗氏の動きです。高市氏はこれまで長年内閣府の科学技術政策や経済安全保障の分野に関与してきた政治家で、経済・技術の競争力強化策として核融合を強く支持する立場を一貫して示してきました。

実際に、彼女の政治的立場の紹介でも、人工知能、半導体、核融合、バイオテクノロジーなどを「危機管理と成長のための重点投資分野」として挙げるなど、政府の積極的な支援の対象として核融合を明確に位置づけています。

この背景には、核融合が日本にとって単なる技術課題ではなく、エネルギーの自立性や経済成長の源泉、産業競争力の強化につながる戦略的課題であるという認識があります。核融合はCO2を出さず、大量のエネルギーを持続的に供給し得るため、エネルギー安全保障と脱炭素の双方を実現する「次世代の基盤インフラ技術」です。

こうした良いことずくめの核融合発電を国家戦略に組み込むことは、単に科学技術予算を増やすだけでなく、経済や外交、国際的なリーダーシップの獲得へとつながる可能性があるという見方が強まっています。

DIII-D真空容器内部で作業する作業員
2017年のメンテナンス期間中、DIII-D真空容器内部で作業する作業員(画像=Rswilcox/CC-BY-SA-4.0/Wikimedia Commons

議員が研究者と直接議論する意味

高市氏自身は長年、核融合技術の重要性を訴える立場を取ってきました。たとえば自由民主党の総裁選でも、核融合や小型モジュール炉(SMR)など次世代原子炉の実用化促進を成長戦略に位置づける政策を公言し、その実現に向けた政府の積極的なかじ取りを主張しています。

これは単なる選挙のスローガンにとどまらず、政策形成プロセスの中で具体的な提言として反映されてきたという評価があります。

また、政策実行の現場でも、国会議員や政府関係者による核融合研究機関への訪問が増えています。自由民主党内には核融合エネルギー推進のプロジェクトチームがあり、その幹事長や事務局長を務める議員らが、核融合研究の中核機関である核融合科学研究所や量子科学技術研究開発機構(QST)を視察する動きが見られます。

具体的には、衆議院議員の小林鷹之氏らが、QST内の核融合施設を視察し、研究者たちと意見を交わしたという報道がありました。こうした現場訪問は、単なる「見学」ではなく、政策立案の材料を直接研究現場から得るための重要な情報収集活動であり、国政と研究現場の距離を縮める実務的な動きだと考えられます。

議員が研究者と直接議論することは、「予算の付け先を判断する側が、技術の本質を理解しに来ている」という意味を持ちます。