回復力のためには多様性が大切

腸内の多様性が高いとは、多種多様な細菌が腸内で共存している状態です。多様な菌がいるおかげで、食物繊維の発酵など重要な役割も多くの菌が担当します。そのため一種の菌が減っても他の菌がその機能を補ったり、病原菌が繁殖するためのスペースや栄養源を協力して奪い取ることでその増殖を抑えてくれたりといった腸内環境を安定させる様々な働きによって、腸全体が不調から立ち直る力が高まります。

この不調から立ち直る力を、「腸のレジリエンス(回復力)」と呼びますTrends Ecol Evol. 2018 29477443。実際、腸内細菌の多様性や菌の豊富さ、そして特に酪酸産生菌の多さはレジリエンスの高い腸内環境の指標とされていますFront Microbiol. 2020 33042082

胃腸
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酪酸産生菌が多いと「強い腸」に

酪酸は大腸の細胞のエネルギー源となり腸粘膜を保護するとともに、炎症を抑える作用も持つためです。食生活の急変や一時的な下痢、抗生物質の使用などで腸内細菌叢がかく乱されても、レジリエンスの高い腸では速やかに回復し機能を取り戻します。腸内の多様性が高いほど、その働きを補う能力が高く安定した腸内細菌バランスを維持します。言い換えれば、腸内という生態系が豊かでバランスがとれているほど長期的なディスバイオシス(腸内環境の乱れ)に陥りにくいのです。

良い腸内環境のもう1つの条件は、腸で不必要な炎症反応が抑えられていることです。腸は外界(食べ物や細菌)と接する臓器であり、多くの免疫細胞が待機しています。