和田秀樹が一番大切にしている習慣
「煮詰まったら、思い切って寝てしまう」という人もいます。
たしかに睡眠にも、同じ効果があるのです。私自身、一番大切にしている習慣は昼寝です。自宅にいるときは、毎日昼間の1〜3時の1時間くらい、昼寝にあてています。スムーズに眠りにつけるよう、昼食には必ずワインを飲むようにしています。
これには休憩の意味もあるのですが、睡眠中に記憶が整理されるのか、起きてからいいアイデアが出てくることが、しばしばあるのです。なので私は昼寝を邪魔されると、機嫌が悪くなります。その時間に電話がかかってくると、いかにも不愉快そうに対応してしまうことがあり、申し訳なく思います。
テレワークが普及し、時間の使い方が自由になっているおかげで、ほかの人にも昼寝をおすすめしやすくなっています。サボるためではありません。それが仕事のパフォーマンスを上げるからです。また思い詰めたり、不安がふくらんだりしたときも、思い切って寝てしまうのが手です。
余談ですが、大学受験も「寝る子は受かる」と言われます。
かつては「四当五落」といわれ、「4時間しか寝ない子は受かる。5時間以上寝ると落ちる」と受験生たちは脅されたものです。過酷な受験競争を論じる際にもやり玉に上がりました。
ところがその後、ある教授が東大合格者の受験生時代の睡眠時間を調査したところ、結果は平均8.5時間と出ました。
つまり、四当五落はウソ。正確には、8.5時間寝ていれば受かり、5時間しか寝てないと頭がちゃんと働かないので落ちる、とするべきでした。
「本業」とは別に、何か活動の場を持つ
日本では、多趣味な人や、副業をいくつもしている人が、軽んじられる傾向があります。
私もまた、本業以外にさまざまな活動をしている1人です。さきほど話したような本の執筆だけではありません。本業のかたわらで映画を撮り、これまで4つの作品で、海外の映画賞を12とっています。
それでいて、精神分析の世界で、英文の論文が専門誌に掲載された日本人の医者は、私を含めて3人だけ。それなのに「ほかの仕事をしているから」という理由で、精神科医として手を抜いていると、よく批判されます。
「本業をおろそかにする、いい加減な人間」というイメージがついているせいでしょう。専門としている領域でほかの医者に負けている気はしないのですが、どうしても片手間でやっていると思われがちです。
このように「その道一筋」とほめそやすのは、日本人特有の価値観です。医療の世界でもそうですし、映画の世界でも、私は異業種監督あつかいされて、日本ではほとんど評価されません。
対照的に、外国の映画祭で、「精神科医をしながら、映画監督をやっている」と言えば、むしろ興味を持ってもらえます。日本とは大違いです。
そういえば、北野武さんも、ビートたけしとして芸人をやりながら、映画監督をしています。武さんですら、海外で賞をとるまで日本国内ではほとんど評価されませんでした。それが予想できていたからでしょう、武さんは海外の映画祭にどんどん出品しました。海外で賞をとらない限り、頭の固い日本の映画評論家には評価されないとわかっていたのでしょう。
私は、さまざまな活動をしているほうが、視野が広がり、本業にも役に立つと思っています。また、ほかの活動をしているから、精神科医の仕事がルーティンにならずに済んでいて、面白いと感じています。活動にメリハリがつくのです。

