子どものありなしと幸福度はどのような関係があるのか。拓殖大学教授の佐藤一磨さんは「これまで、子どもがいる人の幸福度が低いことが問題視されてきた。しかし直近では、子どもがいる人のほうが幸せという研究結果が増えている。その背景には単純に喜べない残酷な選別がある」という――。
「子もちは幸福度が低い」が定説だった
子どもがいる人のほうが幸せ――そう思う人は多いでしょう。
子どもはかけがえのない存在であり、成長を見守ることは人生の大きな喜びです。実際、「子どもがいるから頑張れる」「子どもが生きがいだ」と語る人は少なくありません。
しかし、学術研究が示してきた結論は、この常識とは正反対のものでした。
1990年代から2010年代にかけて、経済学・社会学・心理学の多くの研究は、「子どもがいる人ほど、幸福度は低い」という結果を報告してきたのです(*1)。
なぜ、このようなことが起きるのでしょうか。
子どもが「幸福度」を下げてしまう3つの理由
理由はシンプルです。
子どもは「喜び」であると同時に、「大きなコスト」でもあるからです。
まず、金銭的負担。子どもを育てるには、20年以上にわたって衣食住や教育に多額の支出が必要になります。
次に、時間的負担。特に幼少期には目を離すことができず、自分の時間は大きく制約されます。共働きが一般化した現代では、「時間貧困」に陥る人も珍しくありません。
さらに、精神的負担もあります。子どもの健康、安全、学業、人間関係――成長に伴って、親が背負う責任は形を変えて続いていきます。
こうした負担の積み重ねによって、本来は幸福をもたらすはずの子どもが、結果として幸福度を押し下げてしまう。それがこれまでの研究の基本的な理解でした。
ところが、ここにきて状況が変わりつつあるのです。

