逆転の可能性:「幸せだから子どもを持てる」
それは選択バイアスです。
これは、「観察されているグループがそもそも偏っているのではないか」という問題です。今回のケースでいえば、「子どもがいる人」は、実は最初からメンタルヘルスが良好な人たちなのではないか、ということです。
もしそうであれば、子どもがいるからメンタルが安定するのではなく、メンタルが安定している人ほど子どもを持てているという解釈が成り立ちます。
「親になれる人」が変わりつつある社会
さらに興味深いのは、この選択バイアスが強まっている可能性をアンデルセン研究員らが指摘している点です。
背景にあるのは、結婚や出産をめぐる社会の変化です。かつては、ある程度の年齢になれば結婚し、子どもを持つことが半ば当然とされていました。しかし現在では、結婚も出産も個人の選択に委ねられています。
その結果、パートナーとして選ばれやすい人、つまり心身が健康で、経済的に安定し、社会的に有利な条件を持つ人ほど家庭を築きやすくなっているのです。
言い換えれば、「親になる人」がより選抜された集団になっているのです。これは「残酷な選別」と呼ぶべき変化だといえるでしょう。この変化が、「子どもがいる人のほうがメンタル状態が良い」という結果を押し広げている可能性があります。
実は同様の指摘は、アメリカやイギリスの研究でも見られます(*3)。いずれも、親のほうがメンタルヘルスが良好である一方、その背景に選択バイアスの存在を示唆しています。
ちなみに、アメリカの研究では、高所得の女性層においてむしろ子どもが増えるという分析結果もあります。これも子ども持つ層が経済的に安定した層に偏り始めている可能性を示唆するものだといえます。

