「水田をなくす」とグローバル企業が儲かる

実は今、我が国では伝統的な水田の代わりに、「乾田直播」すなわち乾燥した畑に稲(種もみ)をまく農法を推奨している。代かきや苗作り、田植えが不要で作業時間が短縮できるため低コスト化が可能とされているからだ。メタン抑制にもつながるとあって、グローバル種子農薬企業のM社を買収したB社のCEOも推奨している農法だ。

ただ、この「乾田直播」には様々な問題が指摘されている。

まず、雑草対策として、種もみをまいた後に除草剤を大量に散布する必要があり、農薬使用量が大幅に増える。また、水田による連作障害の抑制、生物多様性、洪水防止・水質浄化機能、伝統文化なども失われる。

乾田直播を採用する大規模農家では、気象データを活用した栽培管理システムを取り入れていることがあるが、その栽培管理システムはB社の関連企業などが提供しているものだ。

つまり「乾田直播」の普及は、グローバル企業の利益につながるということだ。

そもそもこうした農法が本当に必要なのか、一体誰のために推奨しているのか、もっときちんと検証される必要があるのではないか。

南魚沼の水田
写真=iStock.com/joka2000
「水田をなくす」とグローバル企業が儲かる(※写真はイメージです)

「スマート農業」で既存の農家に大打撃

さらに、ほかにも問題だと思われるのが「デジタル農業」「スマート農業」とされるものだ。

日本政府もこうした分野を推進すると言っているが、農業にITを導入することで農家が楽になればいいが、一方でグローバル企業や外資系企業への利益供与になっていないかを監視する必要がある。

今海外ではグローバル種子農薬企業やIT大手がタッグを組んで、AIやドローン技術を駆使した「無人農場」の実現を目指している。

2021年の世界食料サミットの場を、IT大手企業が、こういう無人のデジタル農業を広めていくためのキックオフにしようとしたという話も聞いた。

ただ、農業の無人化とは、やはり既存の農家にとっては脅威となる。AIの進歩と普及によってホワイトカラー労働者が失業するという懸念が現実化しつつあるが、同じように、無人農場の実現によって、既存の農家は廃業するしかなくなる。

「フードテック」や「スマート農業」とは、聞こえはいいが、農家を破滅させ、一部の大資本が農業を独占する方向に進みかねない。少なくとも筆者はそうした懸念を強く持っている。

高市首相が「食料自給率100%」のために進めている政策とは「グローバル企業を助け、農家をいじめる」政策にほかならないということだ。