「遊びに行く街」から「住む街」になった
③2019年〜現在:「住む街」への定着と商業のズレ
その後、子ども人口は高止まりし、地域への定着が進んだ。アパレル需要の低下、交通網の広域化、住宅供給の継続――。これらが重なり、代官山は住宅地としての人気をじわじわと高めていった。
この時期にも「代官山らしい店」の閉店が続いた。1994年開店のインテリア雑貨店の「ASSEMBLAGE(アッサンブラージュ)」が2020年に26年の歴史に幕を下ろしたのは、この流れの帰結だろう。現在の活況の担い手が「セリア」「ミスタードーナツ」「ベビーカー専門店」といった生活密着型テナントに集約されているのも、必然といえる。
フォレストゲートが宙に浮く理由
代官山アドレスが住民の生活に根ざした施設として着実に機能している一方、同じ駅前に立つフォレストゲート代官山の立ち位置は、改めて見ると、際立って曖昧だ。
商業施設としてみれば、テナントの数も回遊性も物足りない。観光地としてみれば、「ここでしか体験できない」という特異点に乏しい。2000円前後のランチと4000円台のビュッフェの店が同居し、どの客層をメインターゲットに据えているのかが見えにくい。
地元住民向けに振り切るには代官山アドレスという先行者がいて、外からの来街者向けに振り切るには代官山T-SITEという圧倒的な存在がある。その両方の間で、フォレストゲートは宙に浮いているように見える。
フォレストゲートが開業した2023年は、代官山が「ガラガラ」と騒がれていた時期と重なる。街の再起を担う施設として期待を集めたはずが、結果的にはかつての「おしゃれな代官山」のイメージにも、現在進行形の「生活密着型」の需要にも、どちらにも応えきれていない。
この「どっちつかず」の違和感は、施設単体の問題ではない。今の代官山そのものの縮図なのかもしれない。観光地化にも生活拠点化にも振り切れないまま、街は移行期の真っ只中にある。その歪みが、駅前という一等地にもっとも直接的に表れているのではないだろうか。


