シャンパンボトルとスプーンの関係

では、不確かさに耐えつづけた例を紹介しましょう。

イギリスの雑誌『ニュー・サイエンティスト』の編集者たちに、次のような質問が寄せられました。

「シャンパンのボトルの口からスプーンを入れ、液体に触れないギリギリのところまで垂らしておくと、炭酸が抜けません。どうしてですか?」

編集者たちは最初、スプーンでシャンパンの炭酸が抜けずにすむなんてばかげていると思いました。ですが、了見が狭いと思われたくないので、簡単な実験をすることにしました。すると驚いたことに、オフィスの冷蔵庫にある半分残ったシャンパンのボトルにスプーンを垂らしておくと、12時間後でも炭酸が抜けていなかったのです。24時間後でもいくらか残っていました。

シャンパングラスにスパークリングワインを注ぐ人
写真=iStock.com/AY MOMENTS
※写真はイメージです

しかし編集者たちは、新しい物理法則を発見したと公表する前に、早期打ち切りの傾向を抑えて、もう一つの実験をしてみました。

今度は、開けたシャンパンのボトルにスプーンを入れて保存したものと、スプーンを入れずに保存したものを用意しました。そして、ボランティアの人たちにスプーンのことを知らせないまま味見をしてもらいました。それぞれのシャンパンの「炭酸の程度」を採点してもらうと、スプーンのある無しはまったく影響しないことがわかりました。どうしてでしょう?

友人とのテレパシーは存在しない

それは、おおかたの人の予想に反して、シャンパンを開けると約96時間後まで完全には炭酸が抜けないからです。ご自分で試してみてください(もちろん安いシャンパンで)。つまり、思いがけなく炭酸が長もちしたのは、スプーンの効果だと思うのもしかたがないのです。

大切なのは、「驚くような」または「並はずれた」結論にすぐに飛びつかず、まずは判断を保留して事実を確認し、せめて他の説明がないか考えることです。編集者たちはこう述べています。

「つながりがあるように見える事象に意味をもたせるのはよくあることだ。それが珍しいもので、比べるデータがなければなおさらである。人々が『わあ、びっくり。ちょうどあなたのことを考えてたら電話が鳴って、それがあなたからだなんて』と言うのを、毎日のように耳にするだろう。誰もが友人とテレパシーでつながっていたいものだ。しかし忘れてはならないのは、当然ながら、相手のことを考えていても電話が鳴らなかった回数である」