過去の研究では、成人になると脳は変化しないと考えられていた。だが、脳について多くの著作を持つ神経科医のリチャード・レスタックさんは「脳は生涯にわたって変化しやすく、頭を使い続けることで認知症リスクを下げるが使わなければダメになる」という――。

※本稿は、リチャード・レスタック『いくつになっても頭はよくなる 記憶力・集中力・思考力・創造力 全部高まる28の習慣』(サンマーク出版)の一部を再編集したものです。

ヒトの頭部の形を模したジグソーパズルで遊ぶシニアの手元
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今日始めれば脳は今日から変わる

かつて神経科学者たちは、人間の脳は大人になるまで成長し、それから数十年は変化せず、やがて当然のように構造と機能が低下していくと信じていました。また、失われた脳細胞は新しいものと置き換えられないとも信じていました。ですが、この金科玉条のような古い教えは、今では真実とは考えられていません。

最近の研究により、学習と記憶をつかさどる海馬では脳細胞が増えつづけることがわかっています。さらに、脳は静的な組織ではありません。豊富な経験を積んでいけば、時とともに優れた可塑性を見せます。

たとえば、プロの音楽家は、脳内の音楽に関する部位のニューロンをふつうの人よりたくさん使うので、音楽を聴いているだけでも多くのニューロンが活性化します。その変化の程度は、音楽を学んだ年数によって違ってきます。とはいえ、音楽的能力を司る部位を強化するのに、遅すぎるということはありません。ですから、今日あなたが楽器を手に取れば、その後の練習量に応じて脳が変化していくでしょう。こうした可塑性が、脳の基本的な働きの一つなのです。

40代以降の実践でも遅くない

脳のこうした複雑化は、動物界にも見られます。ハエの脳でも経験によって違いが現れます。カリフォルニア州ラホヤにある神経科学研究所の上級研究員、ジョージ・L・ガボール・ミクロスがこう述べています。「入念な分析により、ハエの脳には顕著な構造的可塑性があることがわかった。特定の生息条件を与えられると、脳の大きさだけでなく、ほとんどの部位がたえまなく再編される」

食物連鎖上ハエより高等な生物であるラットでは、おもちゃや仲間、広々とした生息条件を与えられると、さらに脳細胞が増えます。そして賢くなり、行動試験での成績もよくなります。

ですから、知的な課題に継続して取り組めば、脳の重要な部位で細胞が増えつづける可能性があるのです。脳のことを、一生かけてつくっていく作品だと考えてください。あなたの思考と行動によって脳はつねに変化しています。その変化が働きや能力を高めてくれるのです。しかも何歳であっても、また、どれほど遅くから始めても同じことが言えます。ケース・ウェスタン・リザーブ大学医学部のロバート・P・フリードランダーの研究によると、20代と30代に知的活動を多く行った人は、アルツハイマー病になるリスクが大幅に減少しました。さらに、40代以降に知的活動を増やした人でもリスクが減少したそうです。