アルツハイマー病、認知症予防にも
「知的活動」も従来の学問にかぎられるわけではありません。図表1は、アルツハイマー病を防ぐ効果のある知的活動を示したものです。ここには、読書や手紙のような学究的なものから、ゲーム、パズル、そして編み物のように指先を使うものまで含まれています。
はっきりわかっていることが1つあります。学びを生涯の課題とし、人々や出来事に対して好奇心や知識欲をもちつづけ、本書ですすめる練習をすれば、アルツハイマー病やその他の認知症にかかるリスクを減らせます。精神的に活発であるように努力すれば、新しいニューロンを発達させ、ニューロン接合や神経回路を維持して増やせる可能性が大きくなるのです。このことは、知的能力が非常に高い人々に対して行われた陽電子放射断層撮影法(PET)による研究で明らかになりました。
その研究によって、プロの音楽家は、ピアノの音を記号化するのに用いられる脳の部位が、楽器を演奏したことのない人より大きいことがわかりました。双方のグループにピアノの音を聴かせると、音楽家の脳内の反応のほうが他方より25%大きかったのです。
脳は心の持ち方でも変化する
さらに、早い時期から楽器を始めた人ほど、大きな反応を示しました。長く訓練を積んできたため、音楽を処理するニューロンをたくさん使うのでしょう。また、ピアノの音に合わせて演奏することにも秀でています。
脳の変化は、心に抱いた考えから生じることもあります。一瞬一瞬の思考が脳の機能に影響を与えます。本章を書く数時間前、わたしは1人の患者の話に耳を傾けていました。彼女はある人の不注意のせいで頭を強く打ち、しばらく意識を失ったそうです。初めは事故のようすを冷静に語っていました。しかし、彼女に怪我をさせた人の「愚かさと無分別」について話しだしたとたん、怒りで顔が真っ赤になり、急に痛みだした頭を両手で押さえたのです。

