「現金・満額・即断」で中国人がかっさらっていく

わかりやすい事例として挙げられるのが、東急田園都市線・駒沢大学駅徒歩7分、物件価格3億5000万円、利回り4.8%、土地値比率100%という、投資家目線で見ても完成度の極めて高い物件だ。立地、価格、利回り、土地値のバランスを考えれば、長期保有を前提とした資産形成において申し分のない条件が揃っており、まさに「元本が毀損しにくく、確実に取りに行くべき物件」だった。

私自身、生活リズムの関係で普段は昼ごろまで寝ていることが多い。その日も例外ではなく、12時に起床し、12時30分に不動産仲介からLINEで物件情報が送られてきた。現地までは車で約10分という距離だったため、すぐに身支度を整えて現地へ向かった。私は長年の経験から、物件の良し悪しを判断するのに長い時間を要することはなく、現地を見てから15分もあれば、購入するか否かの判断は下せる。

そこで、情報を送ってくれた仲介担当者に対し、この物件は「私が資産管理法人を任されている会員の誰か、もしくは最悪の場合は私自身が買う」、すなわち、確実にこの物件を私、及び会員のいずれかが確実に購入する、ということを明確に伝えた。加えて、空室が1室出ているという情報を受け、その居室を内見したい旨を12時45分の時点で連絡している。この時点では、仲介担当者の調整と売主により翌日に内見を行うという流れが組まれ、少なくとも購入のための土俵には乗れている感触はあった。

しかし現実は厳しい。その日の夕方、他業者から売主へ3億5000万円を満額、しかも現金一括で購入する第三者が現れ、あっという間に物件は持っていかれた。

判断スピード、意思表示、条件提示のいずれも遅れてはいなかったが、「現金・満額・即断」という条件を前に、購入することはできなかった。

札束
写真=iStock.com/gyro
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評価額プラス1億円の物件も「現金一括」

同様の経験は他にもある。

たとえば、小田急線・祖師ヶ谷大蔵駅徒歩13分、価格3億6000万円の戸建物件だ。この物件は、私の評価では実力値はおおよそ2億6000万円程度だった。ただし、用途的に最大14台分の駐車場が確保できるという特徴があり、私自身の現在の土地活用戦略や事業計画との相性が非常に良かった。そのため、一般的な評価額を超えてでも取得する意味があると判断し、3億2000万円まで色を付けて購入の打診をしていた。

それでも結果は同じだった。最終的には、中国人投資家が3億6000万円を現金一括で提示し、そのまま購入したというのだ。ここでも買い負けという結果に終わった。このケースも、利回りや収益性といった数字だけで見れば冷静な判断をしているが、現実の市場では、合理性の高さよりも、どれだけ強い条件を即座に出せるかが最終的な勝敗を分ける。