嫌な顔せず、毎日牛乳を買いに行く

安倍の人柄を最もよく表すのが、神戸製鋼時代に上司の牛乳を買いに行くエピソードだろう。

上司が医者に「健康のためにも飲酒前に牛乳を飲むように」といわれると、安倍は夕方になると嫌な顔一つせず誰にいわれるでもなく毎日買いに行っていたという。

このエピソードが示すのは、飲めない人だからこそできる気遣いだ。酔っ払って上司の愚痴に過剰に同意するような真似はできなくても、飲む前の健康管理は手伝える。

むしろ、下戸だからこそ、「そんなに飲んでたら体壊しますよ」と相手の健康を本当に心配し、継続的にサポートできる。「毎日欠かさず」という継続性は、一時的な酔いの勢いではなく、真の思いやりからこそ生まれる。

運転手や、牛乳係を務めることで、安倍は「飲めない」を「頼られる」に昇華させたといってもいいすぎではない、といったら大げさだろうか。

下戸が持つ「4つの競争優位」を武器にする

安倍の例から学べる「お酒を飲めないことの強み」を整理してみよう。

アルコールで乾杯をする人たち
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1 記憶力という最強の武器

宴席での会話、約束、人間関係の機微を全て記憶できる。翌日、酔っ払いたちが何も覚えていない中、「昨日はありがとうございました。○○の件、とても興味深かったです」などと声をかけられることの価値は計り知れない。

2 観察力による情報収集力

酔いが進むにつれて変化する人々の様子を冷静に観察できる。誰が誰を信頼しているか、誰が何に悩んでいるか、組織の本当の力関係はどうなっているか。これらの情報は、シラフの観察者にしか見えてこない。

3 安全性がもたらす絶対的信頼

運転手、介抱役、トラブル対応係。これらの役割を果たせる人間は、組織にとって必要不可欠だ。「あいつがいれば安心だ」という信頼は、酒を酌み交わす以上の絆を生む。

4 時間という最大の資産

二日酔いがない分、翌日から全力で仕事に取り組める。前夜の宴席で得た情報や人脈を、すぐに活かせる。