アラブ系の人々が民主党予備選で示した意思
さてバイデン大統領は、熱心なカトリック教徒として知られる。そのバイデン大統領の民主党政権は、ずっとイスラエルに兵器や弾薬を渡し続けてきた。ハリスは、そのバイデンの副大統領だった。この政権は、一度たりとも本気でイスラエルに圧力をかけてジェノサイド(集団虐殺)を止めようとはしなかった。第二次トランプ政権成立後のバイデン政権幹部たちが、そう証言している。
アラブ系の人々の多くは、民主党の予備選挙で、わざわざ「支持者」なしという投票をしてバイデンにメッセージを送った。ガザ政策を再検討しろと。その総数は七十万票に達した。
だがバイデンもハリスも、このメッセージに正面から応えようとしなかった。
中東ルーツの人たちは、怒っていた。それゆえ、もう民主党には、つまりハリスには投票しないとの観測が強まった。だが、中東系の人々が共和党のトランプに投票したがっていたかというと、そう簡単な話でもなかった。
というのは、2017年1月20日に大統領に就任すると、早くも同月27日に、トランプはイスラム教徒が多数派を占める7カ国からの入国を禁止したからだ。
その7カ国とはイラン、イラク、リビア、シリア、ソマリア、イエメン、スーダンだった。就任から8日目のことだった。その結果、ひとたび出国して、この7カ国に帰国すると、アメリカに再入国できなくなった。これで、故郷に里帰りできなくなったイスラム教徒は少なくなく、また故郷から家族を呼び寄せられなくなった。
イスラム票に接近したトランプ陣営
トランプは、これをテロ対策だと主張した。しかし2001年のアメリカ同時多発テロの実行犯の大半はエジプトやサウジアラビアの市民だった。しかしトランプは、この2カ国を禁止の対象国には指定しなかった。この「テロ対策」には論理性も一貫性もなかった。
そして、あたかもイスラム教徒の全てをテロリストだとみなしているようなトランプの言動が目立った。そんなトランプに対して、相当数のイスラム教徒は怒っていた。
どちらにも票を投じずに棄権するという選択もあった。民主党でも共和党でもない、第三の政党への投票というのも話題になった。たとえば「緑の党」のジル・スタインという女性候補は、イスラエルに対する武器供給の停止を訴えていた。このハーバード大学出身の医師は、ユダヤ系だった。
この状況で、トランプ陣営はイスラム教徒の票を取りに行った。少しでもハリスへの票を減らせれば、との狙いだった。接戦が予想されただけに、わずかの票も軽視できなかったからだ。
前々回2016年の大統領選挙ではトランプがヒラリーを抑えてミシガン州を制した。その票差は、わずか1万704票だった。前回2020年の選挙では民主党のバイデンがミシガンを制した。票差は、15万4188票だった。ミシガンは、まさにスイング州である。民主党と共和党の間で揺れている激戦州だ。この2020年大統領選挙でバイデンは、アメリカのイスラム教徒の93%の支持を得た。トランプは7%しか取れなかった。

