自治体・鉄道会社の後押しも
各鉄道会社もこうした需要に応えて、通勤時間帯に有料特急を走らせているが、ロマンスカーやスカイライナー等のゆったりした車両を使い、PCが置ける広いテーブルや車内Wi-Fiを備えるなど、通勤時間を有効かつ快適に過ごせるよう工夫を凝らす。鉄道会社にとっても伸びしろのあるビジネスチャンスだろう。
湯河原は新幹線を使えば都心へ1時間程度のアクセスだと書いたが、実は新幹線通勤に補助を出す自治体も複数ある。その自治体に外から転入(移住)し、首都圏に通勤する人を対象として、新幹線定期券購入に補助金を出すパターンが多い。
栃木県那須塩原市では月額最大1万円×最大5年、栃木県宇都宮市では月額最大1万円×最大3年、長野県佐久市では月額最大2万円×最大2年、新潟県湯沢町では月額最大5万円×最大10年など(2025年度の例)。
自治体によって年齢制限など適用条件があるので、誰でも必ず補助対象になるわけではないが、東京から離れた場所に家を購入する際の後押しにはなりそうだ。
住居費以外の出費増を忘れてはいけない
特急や新幹線を利用して快適に通勤しながら、「心地よい暮らし」を得られる郊外に住む。LIFULL HOME'Sでは、こうしたトレンドを「こちくら郊外」と名付けた。湯河原への問い合わせが増えているのは、まさにそうした観点によるものだろう。
温泉やスキーが楽しめる地方への移住といえば、リタイア後のセカンドライフに限られると思ってきたが、認識をアップデートしたほうがいいかもしれない。都市部の物件高騰を嫌い、自然豊かな郊外に割安なマイホームを買いたいと望む現役世代がさらに増えてくれば、そうした層向けの分譲開発が進むだろうし、自治体側も移住者向けの補助金を整えて歓迎するだろう。双方にとってウインウインの関係が生まれそうだ。
とはいえ、いきなり地方移住というのは乱暴だ。何度かその土地に赴いて滞在し、生活環境や物価水準、子どもがいるなら教育環境そして医療設備も確かめておきたい。また、地方都市ではマイカー移動が当たり前で、夫婦がそれぞれ1台ずつ所有することも普通にある。
住居費は下がったとしても、これまでなかった車の維持費やガソリン代の負担が上乗せになる点も想定しなくてはいけない。いきなり物件購入を決めるのではなく、一戸建てを借りてお試し移住という方法もあるだろう。
現状では、ファミリー層を中心に、住みたい街が郊外化する流れは止まりそうにない。どこで暮らすかは、大げさに言えば自分と家族の人生を方向付ける要素となる。家を買うこと=老後に重視したい暮らし方を考える機会とも言えそうだ。


