エネルギーの「大動脈」封鎖のインパクト
3月第2週、WTI原油先物価格は一時120ドル近くまで上昇した。12日、北海ブレント先物価格が100ドル台に上昇して引けた。ブレント価格が100ドル台を上回るのは、2022年8月以来だ。LNG、石炭などほかのエネルギー資源価格の上昇も鮮明だ。
このような価格上昇の背景には、ホルムズ海峡の封鎖長期化への懸念がある。イランの革命防衛隊は、ホルムズ海峡を事実上封鎖した。一時は、米軍が護衛してタンカーを航行させるとの観測もあったが、実際には米国はできなかった。
イランの報復攻撃は予想以上とみられる。世界最大級の石油輸出ターミナルであるサウジアラビアのラス・タヌーラは、予防的措置として操業を止めた。さらに12日、新最高指導者のモジタバ師は徹底抗戦を表明した。
アフリカ南端まで大回りせざるを得ない
戦争勃発で、船舶運航コストも上昇した。世界の大手保険会社は、イラン領海、ペルシャ湾および周辺海域での戦争リスク補償を適用外に指定した。契約可能な場合、戦争リスク保険料率は20倍程度急騰したようだ。
石油やLNGの運搬船など民間船舶は、紛争海域を避け喜望峰を経由する航路をとらざるを得ない。物流混乱、供給網(サプライチェーン)寸断でエネルギー資源だけでなく、基礎資材、農産物など広範な分野で供給制約が発生し生産は落ち込む。
カタールやサウジアラビアから、パイプラインでLNGや石油を運搬する経路もあるのだが、現在稼働しているものは、紅海経由のものが多いようだ。地中海に直接運び出すパイプラインは、すでに稼働が止まっているものが多い。
パイプラインの輸送能力はタンカーを下回る。エネルギー資源の需給逼迫感は高まり、世界的に物価は上昇することが想定される。イランはホルムズ海峡封鎖で原油やLNGの価格上昇を煽り、トランプ大統領を窮地に追い込もうとしている。イランは、同海峡を支配する力を世界に誇示しているといってもよい。

