「LNG争奪戦」に日本は勝てるのか

短期的に見ると、私たちの暮らしに最も大きな影響を与えるのはインフレ懸念の上昇だ。特に、エネルギー価格が上がり、それによって電気料やガソリン、食料品などの値段が上がることは、私たちの生活を直撃する。

足元で、LNGの供給には悲観的な見方が多い。LNGは燃焼時に温室効果ガスの発生量が相対的に少ない。脱炭素、そして成長期待高まるAIデータセンター、AIチップ製造の増加にLNG火力発電の重要性は高まっている。イラン戦争で、世界のLNG争奪戦が発生している。

ホルムズ海峡の封鎖により、LNG供給の絶対量は減少する。価格上昇に加え、わが国は円安が進んだ分、他国にLNGを買い負ける恐れは高い。仮に、アジア、オーストラリア、米国などからのLNG調達経路が確立されたとしても、時間、コスト共に負担は増える。

物価上昇のみならず、LNG火力発電の落ち込みによる電力供給不安に直面する恐れも高い。電力供給不安が本当に高まると、企業は操業度を落とす。業績懸念の高まりも個人消費を下押しし、景況感は悪化すると予想される。こうした展開に準備する国もある。脱原発政策を推進したドイツは経済社会を守るために原発再稼働を議論しつつあるようだ。

LNGタンカー
画像=iStock.com/alvarez
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令和のコメ騒動、エッグショックの次は…

LNGの輸入減少は、第一次産業にも悪影響をもたらす。イラン戦争で湾岸地域の石油化学プラントに甚大な被害が及んだ。それにより、肥料の生産能力は急速に低下し、価格は急騰した。

そこに電力料金の上昇が加わると、再度、食品価格が上昇するリスクは高い。令和のコメ騒動、エッグショックといった状況は、これまでにまして深刻化するかもしれない。電力不足が発生すると、医療、介護、教育などの分野にも多大な影響が及ぶ。

イラン戦争で、わたしたちを取り巻く経済環境は転換点を迎えた。物価上昇、エネルギー不足などによる景気減速が同時に進行する“スタグフレーション”のリスクは高まっている。

仮にそれが現実になると、賃上げ機運は雲散霧消するかもしれない。円安、金利上昇、株価急落の“日本売り”が大規模に発生し、高市政権の支持率が急落する展開も懸念される。日本経済の先行きは楽観できない。

ホルムズ海峡の封鎖が長期化する場合、かつて1970年代の“オイルショック”の時のように、トイレットペーパーが店頭からなくなり、物価が“狂乱物価”と呼ばれるほど上がることも想定される。今回は“狂乱物価”の再現にはならないことを祈るばかりだ。

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