習近平政権の渡航自粛要請を受け、中国系航空各社は日本路線の座席数を最大半減させた。だが行き場を失った乗客は日本の航空会社にシフトし、JALは過去最高を更新。「制裁」の代償はむしろ、発動した中国側に集中していると、海外メディアは指摘する――。
全人代軍代表団の全体会議に出席した習近平氏=2026年3月7日
写真=新華社/中国通信/時事通信フォト
全人代軍代表団の全体会議に出席した習近平氏=2026年3月7日

中国系の減便で、日系エアラインが潤う

習近平政権の渡航自粛要請で、中国の航空会社は日本路線の座席数を約23%削減。対照的に日本航空(JAL)は、過去最高益を叩き出した。

米航空宇宙専門誌のアビエーション・ウィークは、イギリスの航空データ会社OAGの定期便データ分析を取りあげている。それによると、中国系航空会社が2025年12月に予定していた日本路線の供給座席数は、11月初旬時点の185万席から142万席へ急減し、23.2%の減り幅となった。便数ベースでは9813便から7432便に減少し、24.3%の落ち込みを見せた。中国民用航空局(CAAC)による正式な減便指示は確認されていないものの、習近平政権の渡航自粛要請を受け、各社一斉に大幅な縮小に動いた結果だ。

波乱の中、利益を伸ばしたのがJALだ。同社のプレスリリースによれば、JALグループは2025年度第3四半期累計(4〜12月)で、EBIT(利払い・税引き前利益)が前年同期比24.2%増の1791億円、売上収益が同9.2%増の1兆5137億円となり、いずれも再上場以降の同期間最高を更新した。

中国便を利用していた利用者には、出張や大切な帰省など容易に移動をキャンセルできない者もいる。中国系航空各社が減便に舵を切ったことで、こうした需要が日系企業になだれ込んだ。中国が外交カードとして打ち出した減便は、狙いとは裏腹に日本の航空会社を潤している。

自粛要請は3月まで続く見通し

発端は高市早苗首相の台湾をめぐる発言だ。中国政府はこれに強く反発し、国内航空各社に「当面の措置」として日本便の削減を指示したと、米金融情報サービスのブルームバーグなど複数のメディアが報じている。

どの路線をどれだけ減らすかは各社の裁量に委ねられたが、日中の外交関係に大きな変化がなければ、旧正月にあたる春節の繁忙期を挟んで措置は継続。冬ダイヤが終わる2026年3月末まで続く見通しだ。

ブルームバーグによると、中国発日本行きの12月の予約済み便数は10月比で20%以上減った。上海・広州・南京と名古屋・福岡・札幌を結ぶ少なくとも12路線がすでに廃止された。運航を続ける路線でも、大型のワイドボディ機から単通路の小型機への置き換えが進む。

OAGが分析した航空会社別の削減率は、中国国際航空約10%減、中国東方航空13%減、中国南方航空24%減。だが、国際路線の選択肢が限られる格安航空会社(LCC)各社の痛手はさらに大きい。春秋航空は36%減、吉祥航空は41%減、深圳航空はほぼ半減した。

深圳航空ボーイング737-800
深圳航空ボーイング737-800(写真=boeingdreamscape/CC-BY-2.0/Wikimedia Commons