中国路線は収益のわずか8%
こうして中国の航空会社が退いたあとの需要を、日本企業が取り込む形となった。
香港の英字新聞のサウスチャイナ・モーニングポスト紙がOAGの集計をもとに報じたところによると、日本の航空会社が運航する中国路線の便数は2025年10月下旬の189便から、2026年1月12日時点で203便に増えた。
増便を牽引したのはANA傘下のLCCピーチ・アビエーションと日本航空の連結子会社で中国便に特化したスプリング・ジャパンだ。東京大学公共政策大学院の鈴木一人教授は同紙に、「中国の航空会社が減便した分、乗客が日本側にシフトしている」と語った。
収益への影響がなかったわけではない。旅行業界B2Bメディアのトラベル・アンド・ツアー・ワールドによれば、JALは2025年12月単月では、中国路線の収益640万ドル(約10億円)を失った。だが、同路線は国際線収益の約8%にとどまる。
実際、日本航空のプレスリリースによると、フルサービスキャリア事業の売上収益は1兆1967億円(前年同期比9.2%増)、利払い・税引き前利益を示すEBITは1268億円(同28.6%増)で、国際旅客数は8.2%増、国内旅客数も7.4%増、アジア―北米間の国際貨物収入も19.3%伸びた。中国路線で失った月10億円は、EBIT1268億円に対して極めて小さい。
トランプ関税が太平洋路線に追い風
なぜ日本の航空業界は、中国からの減便にこれほど動じないのか。答えは、数年がかりで築いてきた収益構造の変化にある。
損失を補っている大きな要因の一つが、太平洋路線だ。印航空専門メディアのアビエーションA2Zによると、2025年4月以降のアメリカの関税拡大を機に、サプライチェーンの再編を迫られた日米双方の企業幹部の出張が急増。JALとANAの太平洋路線ではプレミアムシートの需要が大幅に膨らみ、トランプ関税が思わぬ形で航空会社を支えた。
JALのビジネス需要は前年比121%増に達し、ANAも北米路線を軸に国際線で過去最高益を更新した。円安で日本人のレジャー渡航は細ったが、法人需要の急伸がその目減り分を大きく上回った。
旅客1人あたりの単価も大きく上昇した。航空業界ネットワーク開発専門誌のルーツによると、両社の国際線旅客イールドはコロナ禍前の1.7倍に達している。イールドとは旅客1人を1キロメートル運ぶごとに得られる収入を指し、航空会社の収益力を測る基本指標だ。
プレミアムキャビンの需要増、円安による外貨建て運賃の押し上げ、そして供給がコロナ禍前の水準に戻りきらないなかで需要が先行した需給の逼迫が重なり、座席あたりの稼ぐ力がコロナ禍前とは別次元に跳ね上がった。
JAL副社長の斎藤祐二氏はプレスリリースで、「多様な路線ネットワークと他地域の強い需要により、中国路線で失った収益をカバーできる見込みです」と語った。北米、欧州、東南アジアへと数年がかりで路線を広げてきた結果、一つの市場が欠けても揺らがない収益構造がすでに出来上がっている。

