経済面での浸透工作も露骨だった。南部の水道浄化事業の契約獲得にあたり、イラク国会議員に1600万ドル(約25億円)の賄賂が支払われた記録が残る。アメリカがイラク占領中に訓練した元軍関係者までもがイランの情報網に取り込まれ、「身を守るために(イランへの)協力を強いられた」との証言が一連の機密文書に記されている。

23年前と酷似する開戦の「台本」

イラン攻撃に踏み切った米政権に、果たして正当な大義はあるのか。23年前と同じ過ちが繰り返されているとの指摘がある。

2003年1月、ブッシュ大統領は一般教書演説で、イラクには「独裁者」と「大量破壊兵器」の脅威があると訴えた。23年後の同じ演壇で、トランプ大統領も驚くほど似た物語を語っている。

「無法国家」「差し迫った核の脅威」「タイムリミット」。カタール国営衛星テレビ局のアルジャジーラは、トランプ氏の言葉はブッシュ氏の恐怖喚起演説とまったく同じ構図だと指摘する。

9・11テロ後、アメリカはサダム・フセイン政権を「公敵」に挙げたが、今回その矛先はイランのハメネイ師に向かった。

政治アナリストのオサマ・アブ・イルシャイド氏はアルジャジーラに対し、「(トランプ)政権は恐怖の視覚的辞書(脳内で認識されるイメージ)を更新している」と指摘する。サダム・フセインをハメネイ師に置き換えただけとの指摘だ。

ただし、決定的な違いがひとつある。2003年は、イラクが大量破壊兵器を保有しているという政権の主張に合わせて情報機関の評価が操作された。ところが2026年の情報評価は、トランプの主張と正面から矛盾している。

「ブッシュには9・11(2001年の米同時多発テロ)後の怒りがあったが、イランは米本土を攻撃しておらず、トランプは脅威を捏造するしかない」と同氏は分析する。アナリストらはこの矛盾自体が意図的に作り出された「情報の混乱」であり、軍事力の行使を正当化する仕掛けだとみている。

イマーム・ハッサン・モジュタバの誕生日を控えたある日、詩人や文化人、そしてペルシア文学の教授たちの一団が、革命指導者の賓客として招かれた。2025年3月15日
イマーム・ハッサン・モジュタバの誕生日を控えたある日、詩人や文化人、そしてペルシア文学の教授たちの一団が、革命指導者の賓客として招かれた。2025年3月15日(写真=khamenei.ir/CC-BY-4.0/Wikimedia Commons

支持率わずか21%の開戦

インターセプトは矛盾の具体例を挙げている。トランプ氏はイランのICBM(大陸間弾道ミサイル)が「まもなく」アメリカ本土に届くと主張したが、技術的裏付けはない。また、イラン国内の抗議活動の死者数を、「3万2000人以上」と訴えたが、イランの人権団体の推計は約6500人にとどまる。

核開発をめぐっても、マルコ・ルビオ国務長官が、「ウラン濃縮は行われていない」と語る一方、スティーブ・ウィトコフ中東特使は、「兵器級核物質(核兵器に転用可能な高濃縮ウラン)まであと1週間」と発言しており、政権内ですら説明が食い違う。

世論の後押しも大きな違いだ。イラク侵攻前夜の2003年、アメリカ国民の64%が開戦を支持していた。インターセプトによると、今回のイラン攻撃を支持する国民はわずか21%だという。共和党員に限っても、40%に留まる。「永続戦争を終わらせる」と公約して返り咲いたトランプ氏の下で、与党の支持基盤ですら過半数が賛成しないまま、戦争は始まった。