「自衛隊による護衛」は困難
では、存立危機事態の認定が困難とすると、ホルムズ海峡を通るタンカーの護衛のために日本がとり得る措置としては、どのようなものが考えられるだろうか。
残念ながら、現状の法制度ではその選択肢は非常に少ない。
たとえば、海上の治安回復を目的とする「海上警備行動」では、武器を使用して防護できる対象船舶は日本籍船に限られるため、実効性に疑問がある。一方で、あらゆる船籍の民間船舶を防護できる「海賊対処行動」では、船舶から他の船舶への乗っ取りなどを指す海賊行為しか取り締まれず、自爆型無人機の撃墜などはできない。
一案としては、「武器等防護のための武器使用」がある。
自衛隊法第95条に規定されるこの武器等防護は、日本の防衛力を構成する重要な物的手段たる自衛隊の武器等を破壊や奪取から守るための武器使用権限を、その任務を与えられた自衛官に付与するというもの。
事前に武器等を退避させたり、人に危害を加えられるのは正当防衛または緊急避難に該当する場合に限るなど、武器使用には厳しい要件が課されている。
しかしそのおかげで、日本の領域外で他国軍からの襲撃に対処したとしても、憲法上の問題は生じないというのが日本政府の見解だ。
そして、基本的に武器等防護のための武器使用は、自衛隊が保有する武器等を守ることを目的としているが、その効果がそれ以外のものに及ぶことがあり得る。
たとえば、海上自衛隊の護衛艦が自艦防護のため、接近する自爆型無人機を撃墜したとする。このとき、たまたま民間船舶が護衛艦と接近した状態で並走していたとすると、自艦防護が結果的にこの民間船舶をも防護したことになるが、こういったケースが該当する。
しかも、あくまでこれは自艦防護だから、並走している船舶の船籍に制限はなく、事実上どの国の船でも防護は可能だ。
ただし、これはあくまでも「裏ワザ」の類であって、派遣される自衛官に対して「これで大丈夫だ」と胸を張って送り出せるようなものではない。本来であれば、海上警備行動のあり方を見直すなど、法改正が先決だろう。
機雷掃海任務での派遣も現状では難しい
また、こうした直接的な護衛活動への参加以外にも、ホルムズ海峡における事態を「重要影響事態(そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態)」に認定し、そこで活動するアメリカ軍や欧州各国の艦艇部隊に海上自衛隊の補給艦による洋上補給を含めた後方支援活動を実施することも考えられる。
3月12日現在、イラン革命防衛隊がホルムズ海峡への機雷敷設を実施したと報じられているが、過去には湾岸戦争後に自衛隊艦艇が派遣され機雷掃海任務に従事したことがある。
今回もどこかのタイミングで自衛隊がホルムズ海峡の機雷掃海任務のために自衛隊を派遣すべき、という議論が沸き起こる可能性もある。
ただ、機雷掃海・掃討を行う機雷処理活動に関して、そもそもこれを行う掃海艦艇はほぼ非武装であり、現場における戦闘が終結した後でないと活動を実施することは困難だ。そのため、今すぐに自衛隊がホルムズ海峡に派遣されて機雷の処理を行うような事態は想定されないだろう。
いずれにせよ、天然資源の輸入を海上輸送に大きく依存する日本にとって、ホルムズ海峡の安定はまさに国家の命運を左右すると言っても過言ではない。
それに対して、現状では法的な縛りがあまりにも厳しく、自衛隊の派遣が難しいばかりか、仮に派遣されたとしても動きは相当制限されてしまう。今回の事例を踏まえて、あらためて日本という国のあり方そのものについて、検討が必要ではないだろうか。


