無視できないJAの組織票
次に、野党もJA農協によって組織された農業票に期待している面があることだ。
公明党を自民党が離さなかったのは、都市部で対立候補と50-50で競っているときに、3%の同党組織票が対立政党に行くと6%もの差になってしまうからだ。組織された票は選挙で威力を発揮する。JA農協も同じである。ある自民党の主要閣僚を経験した有力議員は、「地元で農業票は1%しかない。しかし、それでも相手候補に行くと2%の差がついてしまう。JA農協を敵にできない」と私に語っていた。
TPP交渉に参加するかどうかでもめていた時、山形県JA農協は参議院選挙で自民党と対立する野党候補を応援した。自民党候補は勝つには勝ったが、薄氷を踏む辛勝となった。
逆に、対立政党からすれば、自民党への批判が、JA農協が組織する農業票としてまとまって自党の候補者に来るかもしれないと考えると、JA農協の利益を無視するわけにはいかなくなる。
最後に、日本維新の会や公明党のように、基本的には都市型政党であっても、党内に農村部出身の議員がいると農業保護を考慮しなくてはならない。「私が落ちてもよいのか」と言われるからである。都市型政党から全国政党へ脱皮する際のジレンマである。
食糧安全保障の議論をすべきだ
生産者の利益は十分に考慮するが消費者の利益は考慮しない。おコメ券を提案したが、米価はそのままなので農家は史上最高の米価の恩恵を受け続ける。おコメ券を受けられない消費者は高い米価を払い続ける。
高米価の根源に3500億円の減反補助金があるうえ、おコメ券も4000億円ほどの財政負担がかかる。マッチポンプ政策だ。犠牲者は多数の消費者と納税者だ。農水省は一部の奉仕者であって全体の奉仕者ではない。
バブル米価でコストの高い零細な兼業農家は農業を続ける。規模を拡大したい主業農家に農地は貸し出されない。健全な農業を作るための構造改革は頓挫する。他方で、零細兼業農家が組合員であり続けてくれるので、JA農協は莫大な兼業収入を預金として確保し海外等で資金運用できる。
戦時中のコメの配給を実現しようとすると、コメは1600万トン必要なのに、減反で700万トンしか生産はない。シーレーン破壊後、半年経たずに国民全員は餓死する。安全保障の上からも憂慮すべき問題なのに、どの政党も減反という亡国農政を争点に取り上げようとはしない。
「生活者ファースト」も「日本人ファースト」もないということなのだろう。
(初公開日:2026年2月2日)



