自民党内で囁かれる「3つの仮説」
では、なぜ高市政権は国民会議という迂回路を選んだのか。与党関係の偉い人や高市官邸の皆さんの話も賜りつつ、いくつかの仮説を検討してみます。
仮説①:制度設計の見通しが立っていない
最も素朴な読みは、「やりたいけれど、どうやればいいかわからない」というものです。
よく聞かれる声は「高市早苗さんが『国民会議を立ち上げろ』とおっしゃるので、中身はともかくとりあえず国民会議をやっています」という話です。
食料品の消費税率をゼロにすれば、年間およそ5兆円の税収が消えます。高市さんは「特例公債の発行に頼らない」と明言していますから、補助金や租税特別措置の見直し、税外収入で5兆円×2年分=10兆円を工面しなければなりません。YOUの考える財源はどこに。
しかし、具体的にどの補助金をいくら削るのか、どの租特を廃止するのかという話になれば、それぞれに利害関係者がいます。選挙で「消費税ゼロ」と言うのは簡単ですが、その裏側の財源論を詰めるのは別次元の作業です。
それでもやるのだと高市さんが数の力で押し切ろうとしても、今度は「国会で決めようにも制度が立ち上がらない」という話になるので、高市さんは消費税減税を進めたくても進まないのを、超党派国民会議で議論すればそれっぽい結論が出るだろうと考えたのではないか、という話になります。
実質的に「時間を稼いでいる」
さらに技術的な課題もあります。小売店のレジシステムの改修にはおよそ1年かかるとされ、テイクアウトと店内飲食の税率差が10%に拡大する外食産業への影響も未整理です。どこぞで「あんなのレジの数字を変えるだけなので一瞬ですよ」と解説した人物がおられましたが、現実的には民間の負担が大きくむつかしいと判断するほかありません。
なにより、給付付き税額控除に至っては、前提となるインフラ自体が存在しません。所得税額に応じて給付額が決まるわけですから、正確な所得把握が必要です。それを実現するためにはマイナンバーと預貯金口座の紐付けが必要ですが、現状では任意登録にとどまっています。2013年の国民会議でも同じ論点が議論され、当時は「所得・資産の把握が困難」という理由で導入が見送られた経緯があります。あれから13年が経ちましたが、この根本的な問題はほとんど前進していません。
つまり、与党内で案をまとめようにも、まとまる見通しが立たない。それは、国会で圧倒的な議席数を持つ与党であったとしても、ない財源を前提に制度設計はできないし、国会で成立させることはできない。だから「国民会議で議論する」という形を作ることで、検討を進めている体裁を整えつつ、実質的には時間を稼いでいる――そういう見方です。

