「完全キャッシュレスバス」はやり過ぎ

バスでも完全キャッシュレス化の動きが加速している。深刻なドライバー不足や赤字事業者が多いことを背景に、「赤字改善・ドライバーの負担軽減が目的」と旗振り役の国土交通省は説明する。

確かに、硬貨を銀行預金にしようとすると手数料という名の妙なペナルティを課す不届きな銀行が増えているものの、交通系ICの利用は事業者にとって無料ではない。ドライバーの報酬を引き上げて労働条件を良くすればすむ話のすり替えでしかない。

都内バス事業者の運賃箱
筆者撮影
都内バス事業者の運賃箱

この完全キャッシュレス化には大きな問題があると指摘しておかなければならない。それは、硬貨が銀行券とともに法定通貨(リーガルテンダー)であることによる。

法貨とは、商品やサービスの対価としていを受ける際に拒否できないものを言う。これを債権債務関係でいえば、法定通貨の意味は、支払いの「ファイナリティ」を有しており、このファイナリティこそ、債権債務関係を法的に完了させることができる。

時代の流れや効率化は重要であり、キャッシュレス化の推進は大いに良いことだが、現金の支払いを拒否することは法的に大いに問題を含む行為だ。

もしやるなら、貨幣法や日本銀行法を変えて硬貨そのものを廃止し、一定額未満の支払いはキャッシュレス支払い手段に限定し、事業者はそれを拒否できないという規程を設けるなど、法的な整備を必要とする。

Suicaの「上限額30万円」が意味すること

JR東日本は、2026年秋からSuicaの限度額を現在の2万円から30万円に大幅に引き上げると発表した。これだけ聞くとSuicaの残高が30万円になるように聞こえるが、実際には少し異なる。モバイルSuicaにQRコード機能を付与して、コード決済としての限度額を30万円にするというものだ。

そのチャージにはJR東日本のクレジットカード事業である「View Card(ビューカード)」などクレジットカードから行い、事前のチャージなしでもQRコード決済の後払いとして利用することもできるようになる。結局は自ら、クレジットカードの機能としての優位性を認めたとも言える。