「前払い」は「後払い」に飲み込まれる宿命

利用者にとって、まずはシステムの安全性・信頼性とともに、ネットワーク外部性が重要かもしれないが、次に重視されているのは「先払い」の安全神話だ。

クレジットカードの「使い過ぎ問題」を気にする人は少なくない。確かに、ついつい使い過ぎてしまい毎月「不渡り」に怯える私にはその気持ちがわからなくもない。支払ってもない商品やサービスを受け取ることを心配する国民性は素晴らしいが、経済は「後払い」によって進化発展してきた。

支払いを後に延ばすことを信用という。大学生に「信用」と「信頼」はどこが違うかと質問すると、ほぼ同じじゃないですか? と返ってくるが、経済学の領域ではそれらは明確に違うのだ。後から払っても良いよ、これが信用で、それは相手を信頼するから信用が成立する。プリペイド(前払い)がポストペイ(後払い)に飲み込まれるのは、信用を軸にする経済の宿命だ。

良くも悪くも日本はポイント大国であり、現金で交通系ICにチャージしてもポイントは貯まらない。ポイ活は、結局は利用者の誰かが負担しているので、社会的にみれば回り回って自身が負担しているし、ポイントを貯めない人からポイント獲得者へ資産が移転するのだ。

このポイ活の浸透が続けば、より一層クレカタッチ乗車が拡大する。交通系ICの残高もクレジットカードからチャージする利用者が増加し、その時点で「先払い」ではなくなっており、「後払い」の強さが際立つ。

福岡市地下鉄が行っているタッチ決済乗車の1日最大料金サービス
筆者撮影
福岡市地下鉄が行っているタッチ決済乗車の1日最大料金サービス

交通系ICはタッチしなくてもOK

交通系ICの利点は、入鋏にゅうきょ時の処理スピードの速さだ。入鋏とは昔、切符を購入して有人改札で鋏を入れてもらっていた時代の言葉で、駅によって鋏の形が異なり、切り取られた形を見て駅がわかる楽しみ方も存在していた。それがスタンプに変わり、現在はタッチになった。

交通系ICは、ソニーが非接触型を売りに開発した「FeliCa」規格を採用している。そのため、実際には1センチ程度近づけるだけで認識され、タッチしなくてもよい。非接触のほうが衛生的でスピードも速い。