1057億円の“善意”で維持される赤字線

JR東日本の中でも、鉄道として営業成績がよろしくない「ご利用の少ない線区」(1日当たり利用者2000人以下)は、36路線、71区間。ほかJRでは西日本九州北海道でも同様の資料を公表しており、存続が危ぶまれているローカル鉄道は、全国至るところに存在する。

久留里線と同様、もしくはそれ以上に「鉄道としての存続に意義がない」路線も多く、実例として「駅と市街地が離れすぎて、いちいち乗り換えが必要」「土砂災害が頻発するため、時速15km程度の徐行つづき」など……バスやデマンドタクシーと比べて鉄道にさっぱり優位性がなく、ピッタリと並行する国道に路線バスを走らせれば数千万円の赤字で済むところを、何億円もの年間赤字を出して「鉄道である必要がない鉄道」を存続しているのだ。

もっとも各路線は「黒字路線の収益を内部補填で回す」という“善意”で赤字ローカル線の運行が成り立っており、沿線では当事者意識や危機感がきわめて薄い。結果として、必要のない鉄道を哀愁・愛着といった論調だけで存続させるために、JR東日本が790億円、JR西日本が267億円もの赤字負担を強いられているのだ(各社「ご利用の少ない路線」対象線区から集計)。

「赤字ローカル鉄道のトリアージ」が必要だ

こういった事態の解決策として、そろそろ「赤字ローカル鉄道のトリアージ」が必要ではないか? 必要な路線はできるだけ長く経営できるように投資のうえで残し、既に必要がなくなった鉄道は、その地の輸送のサイズに見合ったバスなどへ置き換える。すべての鉄道は存続できないが、優先順位付けはあった方が良い。

久留里線のように、「鉄道として存続する意味がない鉄道」は依然として多い。どうしても存続させたい場合は、2022年に災害から復旧した「JR只見線」、2033年ごろに運行再開予定の「肥薩線」のように、一定の地元負担と「今後の誘客への協力」を条件にしても良いだろう。各地には、自治体からの出資で、経営がある程度好転した鉄道もある。

JR只見線
筆者撮影
JR只見線

ローカル線の在り方を事業者・沿線自治体・国が協議する「再構築協議会」制度が、2023年に始まった。しかし、制度化はされたものの、適用1件目のJR芸備線(広島県)以外では協議が進んでいないのが現状だ。

不要となった鉄道インフラに1057億円を投じるなら、いっこうに本数が増えない通勤電車の増便や車両の更新、交差する幹線道路があるなら高架化など……なにより、過酷な労働環境にある現場の方々の待遇改善にも、しっかり使われてほしい。

ローカル線問題の「トリアージ」は、沿線だけの話ではなく、「鉄道がある街」の暮らし全体にも関わってくる話だ。JRの善意だけの話、地方の話だと、切り捨ててはいけない。

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