Suicaも使えない「時代遅れ駅」
こうして高速バスは開業20年で4倍にも増便し、最短で「2分に1本」は東京方面行きが発着する。一方で、鉄道は利用者減少・減便つづきといった「鉄道衰退」が起きてしまった。もちろん、木更津で東京方面に乗り換えるために、久留里線を利用する人々の減少にも繋がった。
さらに久留里線は、時代遅れと言わざるを得ない「鉄道としての使いづらさ」に難を抱えていた。
郊外の鉄道は、駅の近くに駐車場を設置して「クルマ+鉄道利用」(パークアンドライド)で、通勤利用者を獲得する場合が多い。しかし久留里線の場合は、駐車場はおろか駐輪場さえも少なく、列車待ち環境も屋根があればまだよい方。バリアフリーはおろか交通系IC「Suica」も非対応で、全体的に「時代遅れ」感が否めない。
一方、高速バスなら木更津金田ターミナルで快適にバスを待てる。周辺には格安の駐車場も次々と造成された。
高速バス通勤なら「早くて、クルマを駐車できて、列車待ちも移動中も快適」。久留里線経由の鉄道移動は「遅くて、クルマを停める場所もなく、隙間風が吹く古い駅舎で列車を待ってギュウギュウ詰め」。
久留里線での「高速バスvs鉄道」の差は、通勤時間のQOL(時間の過ごし方の質)の違いとして如実に出てしまう。これでは、いっせいに鉄道離れが起きても致し方ないだろう。
不便すぎて「通院・通学・買い物客」も失う
廃止が予定されている久留里駅―上総亀山駅(9.6km)には、さらなる不利な条件があった。状況が複雑で、いろいろな面で説明しづらいのだが……地元の方に伺った限りでは「交通機関として、使えないにも程がある!」そうだ。
この区間は、わずかな平地を国道465号と久留里線が分け合うように並行している。久留里駅から先は平山駅・上総松丘駅・終点の上総亀山駅と3駅あるが、駅から5kmほど離れている集落も多く、地元の方いわく「駅へのアクセス手段がないので、使い物にならない」のだとか。
かつ、地域の中心地である久留里駅から病院、スーパーは軒並み離れており、学校再編で集約された小・中学校はスクールバス完備、最初から鉄道をアテにしていない。久留里駅―上総亀山駅は、公共交通のメインである「通院」「通学」「買い物」の手段として、もはや用を成していない……東京の近郊なのに「鉄道移動」が選択されなくなり廃止に至るのは、「ひたすら不便」としか言いようがない事情があるのだ。



