1時間に4800貫を生み出すロボットも
ここで面白いのが、「寿司ロボット」という名前の由来です。
当初、喜作はこの機械を「江戸前寿司自動にぎり機」と呼んでいました。しかし、テレビ番組で紹介された際、アナウンサーが思わず「これはまさにロボットですね」と口にしたことで、そのインパクトをそのまま商品名に採用したのです。
1981年に誕生した初号機「ST-77」は、1時間に1200貫という当時としては驚異的なスピードで、安定した品質のシャリ玉を生み出しました。
その功績が評価され、機械遺産にも認定されています。その後、寿司ロボットは時代とともに進化を続けていきます。1990年代には自動停止・始動センサーが搭載され、2000年代には毎時3600貫まで生産能力が向上。シャリを傷めず、ふっくら仕上げるための樹脂製ボディや、タッチパネルの導入など、改良は止まりませんでした。
現在では、業界最速となる毎時4800貫を誇る「SSN-KTA」や、店の雰囲気を損なわないよう、お櫃の中に精巧なメカを仕込んだ「SSG-GTO」など、多様な現場に対応するモデルが揃っています。
最新機種の「S-Cube」は、世界的な職人不足を背景に、海外展開を見据えたコンパクト設計となっています。
寿司ロボットは、「職人の仕事を奪うため」に生まれたものではありません。「誰もが寿司を楽しめる時代をつくる」ための技術です。鈴木喜作が抱いた、コメへの愛情と執念は、いまや世界90カ国以上の厨房やカウンターで、今日も美味しいシャリを生み出し続けています。
回転寿司のビジネス事情
回転寿司とは、一言でいえば究極の薄利多売ビジネスです。
規格化された一定以上の品質の商品を、いかに大量に、いかに効率よく提供し、スケールをどこまで拡張できるか。その一点を突き詰めたビジネスモデルだと言っていいでしょう。
これを靴に例えるなら、一足数十万円のオーダーメイド革靴が高級寿司だとすれば、数千円で流通する高性能スニーカーが回転寿司です。どちらが上という話ではありません。それぞれが、異なるニーズと役割をきちんと満たしているだけの話です。
回転寿司の原価率が、しばしば50%前後、時にはそれ以上に達する背景には、明確な経営判断があります。
魚という商材は、相場が乱高下することもあり、元手のお金を掛ければ掛けるほど仕入れを有利にできる商材ともいえます。これを大規模かつ長期的に展開する際には、資本を投じればその分だけ味や見た目、満足度がはっきりと上がってきます(もちろん、ある程度の目利き力があっての前提です)。
だからこそ、圧倒的な集客を維持するためには、素材への投資を削るわけにはいかないのです。そこで大手チェーンが選んだ戦略が、「掛けるべきは素材、削るべきは人件費」という極めてシンプルな方程式でした。

