怒りが攻撃になる脳の仕組み

1つは、自分が怒りを感じる原因から、いったん離れること。

もう少し具体的に言うと、「怒り」を感じる→その原因に対して「なぜ自分は怒りを感じたんだろう?」と考える→「でも、今、それを形にする(怒る)べきなのか?」と考える→とりあえず、その原因には触らないようにする、という順序です。

後悔に耐える男
写真=iStock.com/yamasan
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つまり怒りの感情を「消そうとする」のではなく、あくまでも、「怒りの原因から離れる」ということです。

こうして怒りの原因(ソース)と距離を取っている間にも、いろいろなことが起こります。

たとえば私の場合だと、「予約の患者さんが来た→診療する」「本の担当編集者さんからメールが届いた→検討して返信する」「明日、国際学会に出発する→準備する」など。それぞれの事象の対応に集中するたび「怒り」のソースに接触する優先順位は下がっていきます。

そうこうしているうちに夕方になり、夜を迎え、「早く寝なくちゃ」となる。先に起こった怒りの感情は「怒る」という行動として表出するチャンスがないまま、いつの間にか収まっている――というのが、たいていのパターンです。

夜も眠れないほどの強い怒りを感じることもあるかもしれません。ただ実際には、いったん怒りの原因から離れ、次々と起こる別の事象にかまけているうちに消えてしまう怒りも意外と多いものなのです。

いきなり熟年離婚を切り出す妻

もう1つは「時間」を置くことです。怒りの感情を消すのではなく、その原因から離れるわけでもなく、懸案事項として認知しながらも長い目でもっと時間を置くだけ。

「しかるべき表出のタイミングと形」を計らう、といったらいいでしょうか。

一例を挙げると、「熟年離婚を切り出す妻」です。

夫に対して日々、怒りを感じているけれども、そのつど表出させるのではなく、溜め込んでいく。そして「今だ」というタイミングにまとめて、しかも、きわめて冷静にロジカルに「あなたのどんなところに、これ以上、我慢ならないのか」を話して聞かせ、「だから離婚してください」と持って行くわけです。

さて、今お話しした2つの脳の機序、「いったん怒りの原因から離れること」「時間を置くこと」に共通しているのは、「脳番地シフト」が起こっていることです。

人間の脳は、「思考」「理解」「感情」など主に司っている機能ごとに、8つの脳番地に分かれています。これは私が開発した脳画像診断法による分け方です。それぞれの脳番地の役割を、ここでざっと紹介しておきましょう。