中央軍事委員会は空洞化した。2022年に習近平氏が任命した中央軍事委員会の委員7人のうち、今も残るのは4人。毛沢東時代以降で最少となった。
習近平氏は側近すら容赦しない。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、中国軍上層部であり中国共産党の最高意思決定機関である政治局の委員でもあった何衛東(カ・エイトウ)氏は昨年10月、汚職容疑で党から除名された。同年、2人の元国防相も除名されている。同じく政治局員で元地方指導者の馬興瑞(バ・コウズイ)氏は、ここ数カ月、重要会議から姿を消している。通常24〜25人で構成される政治局のうち、公の場に姿を現しているのは22人に留まる。
本来は粛清を監督する立場の中央規律検査委員会さえ、無傷ではいられない。今年1月の同委員会会合には、現任期に任命された133人の委員のうち120人しか出席しなかった。出席率は90%に留まり、1986年以来の低水準を記録した。欠席者の多くは軍の高級将校で、昨年末に人民代表から解任されたなどの事情がある。取り締まる側すら枕を高くして寝ることはできない。
執拗に“汚職”規定を書き換える
その統制の道具となっているのが、「中国共産党紀律処分条例」だ。この条例は1997年に江沢民時代に暫定版が承認され、2003年に胡錦濤の下で正式版に格上げされた経緯がある。
習近平政権は、この条例を2015年、2018年、2023年と3度も書き換えた。江沢民も胡錦濤も1度しか改定しなかった条例を、習近平は執拗に書き換え続ける。
中身を見れば意図は明白だ。政治的規律違反への処罰条項は、2003年の胡錦濤版と比較して2023年の習近平版ではほぼ2倍に増補された。一方、経済活動規則違反に対する処罰条項は、2003年版から2015年改定で半減し、その後も2003年版を大きく下回る水準にとどまっている。汚職を撲滅したいなら、なぜ汚職規定を削るのか。この矛盾こそが、汚職撲滅運動の正体を物語る。
2023年の改定では、禁書となった出版物や文書、画像、音声記録をインターネット上で私的に閲覧・視聴するだけで処罰対象となる規定が加わった。反腐敗運動の看板を掲げながら、もはや国民の思想統制のツールともなっている。
粛清するほど処分者が増える矛盾
なぜ、13年にわたる「反腐敗運動」を経てなお、処分者は増え続けるのか。
答えは単純だ。腐敗撲滅運動とはうわべのみで、実態としては習近平氏の意思通りに政治を動かすための統制策に他ならないからだ。恐怖により支配体制を維持する枠組みだ。
チャイナ・リーダーシップ・モニターによれば、党内では、「越反越腐(反汚職運動をやればやるほど“汚職”が悪化する)」という自嘲的なジョークが囁かれているという。13年間を費やした上、政治の透明性は向上せず、制度改革も進まなかった。進んだのは市民社会への弾圧に、言論の封殺、そして司法の政治への従属だけである。
同誌は、終わりなき粛清の原動力となっているのは、習近平氏という強権的指導者が抱える「治まることのない不安感と猜疑心」だと分析する。粛清された者とその支持者には、いつか復讐を果たしたい動機がある。だからこそ習近平氏は、決して手を緩めることができない。緩めた瞬間、刃は自分に向くからだ。

