そして要所で短いフレーズを繰り返す

グローバル・イングリッシュを理解するために、実際の現場で見られる典型的なケースをもとにした事例を紹介する。

大手化学メーカーの30代後半の佐伯さんは、欧州本社での国際会議に初めて参加することになった。議題は新素材のグローバル展開。ドイツやアメリカ、インドから責任者が集まる大舞台だった。

彼は「絶対に間違えたくない」と考え、発表原稿を一言一句暗記して臨んだ。文法も正確だったが、説明は長く複雑になり、専門用語も多かった。結果、参加者からは「結論はどこか」「どう判断すればよいのか」と質問が相次いだ。

彼はその場で答え切れず、「持ち帰って確認する」と繰り返すしかなかった。その日の議題は先送りとなり、「日本人はわかりにくい」という印象を残してしまった。

会議後、同僚からこう助言を受けた。

「完璧である必要はない。大事なのは伝わることだ」

翌日の会議で、彼は思い切ってスタイルを変えた。スライドを簡潔に直し、要点を3つに絞った。そして要所で短いフレーズを繰り返した。

「つまり、こういうことです(In short, this means)……」
「皆さんにとって大事なのは……(For you, the key point is……)」

流暢さは欠けていたが、要点は明確だった。相手の反応はすぐに変わった。

届く英語こそが会議を動かす

インドの担当者は「それなら自分たちの市場にも応用できる」と前向きな意見を出し、アメリカの責任者は「これなら次の検討に進める」と即答した。議論は活発になり、前日とは打って変わって、次のステップが具体的に合意された。

布留川勝『ニュー・エリート論』(PHP研究所)
布留川勝『ニュー・エリート論』(PHP研究所)

佐伯さんは、「完璧な英語ではなく、届く英語こそが会議を動かす」と実感した。

この事例が示すのは、正確で流暢な英語よりも、相手に届く英語が力になるということだ。文法の正確さに囚われすぎず、短くシンプルなフレーズで要点を伝える。相手に配慮し、理解しやすいかたちに直す。そういった英語が求められているのだと佐伯さんは学んだ。

グローバル・イングリッシュとは、ネイティブのように話すことではない。多様な相手に伝わり、相手を動かす「実践の英語」である。

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