複雑な文法はいらない
グローバル・イングリッシュとは、文法的な完璧さよりも、相手に自分の考えを届けることを重視する英語のことだ。これは「簡単な英語」や「下手な英語」を意味するわけではない。相手の立場や文化的背景を理解し、最適な表現を選んで伝える、高度な言語運用だ。
しかし、なにも複雑な文法を使う必要はない。
グローバル・イングリッシュでは、相手との関係性を整える「対話を調整する一言」が重要だ。これを入れるか入れないかで、議論の質は大きく変わる。
たとえば、「この点についての皆さんのご意見を伺いたい(I’d like to hear your views on this point.)」と投げかければ、抽象的すぎず議論の焦点を絞れる。
「確認させてください。私が理解しているのは〜です(Let me confirm. My understanding is 〜.)」と挟むだけで、相互理解の誤差を事前に修正できる。
「私はこう考えますが、他の可能性もあるかもしれません(My view is 〜, but there may be other options.)」と添えれば、強い主張に見えずに議論を前に進められる。
これらの表現は文法的に複雑ではないが、相手との関係性を意識し、適切なレベルで自分の思考を伝えている。その一歩が、言語力以上に、自分が相手と対話する意志を伝えることになる。
また、相手に配慮した表現を選ぶことも大切だ。たとえば、「私は反対です(I disagree.)」と言うより、「あなたの考えは理解できますが、私は異なる視点を持っています(I see your point, but I have a different perspective.)」と言うほうが、相手を尊重しながら自分の意見を伝えられる。
また、「あなたは間違っています(You’re wrong.)」の代わりに「それは興味深いですね。ほかの見方もあるかもしれません(That’s interesting. I wonder if there’s another way to look at this.)」と表現することで、対立を避けながら議論を深めることができる。
同じイエスでも違う意味
英語は付け焼き刃ではどうにもならない。急に必要になったときに慌てて勉強しても、すぐに会議で発言できるようにはならないし、交渉で信頼を得られるようにもならない。英語習得には時間がかかるからだ。
それは、単に「覚えるべき単語が多いから」ではない。英語を実際に使えるようになるには、いくつもの段階を経て、少しずつ積み重ねていくプロセスが必要だからだ。
まず、基礎的な知識を身につけるのに時間がかかる。文法や語彙は本を読めばわかるような知識だが、それを会話で瞬時に引き出せるようになるには反復が必要だ。頭では理解しているのに、口から出てこない――この「知っている」と「使える」のギャップを埋めるには、地道な練習が欠かせない。
次に習慣化の壁がある。英語は一度覚えたら終わりではなく、筋トレに近い。毎日少しずつトレーニングを重ねないと、すぐに錆びついてしまう。1日30分の音読を続ける人と、1カ月に1度だけまとめて勉強する人とで、半年後に大きな差が生まれるのはこのためだ。
さらに、異文化理解のプロセスにも時間がかかる。英語は単に「日本語を翻訳すればいいもの」ではなく、背景にある文化や価値観を含めて理解しなければ伝わらない。たとえば、同じイエスでも、インド人が使う場合は「聞こえています」「わかりました」という意味で、必ずしも賛成を示すわけではない。

